【バベルの図書館文學賞】試論⑤~選考方式
最大の問題は選考方式である。
読者諸賢は御存知だとおもうが、ノーベル賞でさえ、最終選考の『あまさ』が目立っている。第一回でトルストイが落選したのは、政治的問題なので詮無いことだが、嚮後、カフカもジョイスもプルーストもボルヘスもナボコフも受賞していない。よく、『賞のレベルを凌駕すると、寧ろ、受賞できなくなる』といわれるが、これは致命的な問題である。原因は明鬯だ。『選考委員のレベルがひくすぎる』のひとことにつきる。嘗て、東浩紀によるデリダ論が三島賞候補にあがった爾時、『ジャック・デリダを識っている選考委員が筒井康隆ひとりだけだった』ので落選したという惨劇がえんじられた。『人間は往々にして、自分の理解をこえるものを、すべて断罪する』というようにラ・ロシュフコーはいっていたはずだが、さもありなんである。丸山健二は曩時、『文學賞は徹頭徹尾、編集部のみで選考されるべきだ』というように書いていたが、愚生はそれでも限界があると愚考する。【バベルの図書館賞】は、ノンジャンルの賞にしたいので、下読みからして、因陀羅網の文學体系全軆を知悉しているほどの知性が冀求されるが、現実的には難儀だろう。純文學系の新人賞では、東大や京大の教授が下読みに参加することもあるといわれるが、これは冀望があるかもしれない。文學全般に造詣のふかい教授陣で選考委員をかためるのである。ほかにも、各ジャンルのプロを招聘するなどかんがえられるが、選考方式問題に関聯しては明鬯たる指針はうちだせていない。
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