第9話 豚は食べ物

 朝食でとうさんとかーさんに言われた。


 「ニカ。豚は食べるかもしれないから覚悟をしておきなさい。」

 「もぐもぐ…。え?」

 「宰相様からお話があったのよ。」

 「ああ。双子山がダンジョン化しはじめているらしい。なんでも、ダンジョンにしか出ないミミックがでたとか。」

 「な、なんで!食べることになっちゃうの!」

 「ダンジョン化した山は動物が住めなくなり、食べ物がとれなくなるからだ。」


 あまりのショックにその後のことは覚えていない。気づいたら、子ブタを連れて森を歩いていた。

 「僕がブヒを何とかしてやるからな。」

 「ブヒッ」

 「ここの藪を抜けた先には僕の秘密の場所があって、自然薯がいっぱい生えているんだ!これを持っていけばとうさんだっ…て…」


 僕だけの秘密の自然薯畑は、猪にめちゃくちゃに掘り返されたいた。


 「ブヒッ…。」

 「だ、大丈夫!まだまだ、あるから!」


 秘密の薬草畑、秘密の茸畑、秘密の小リンゴの木。全部、全部、酷いことになっていた。


 「この食べ後…山鹿?!山にいた動物たちが、森に流れてきてる…。」

 「ブヒッ…。」

 他に僕にできることは…スキル…


 一縷の望みを使ってスキルを使った。


 スキル!≪超異次元召喚≫セレクトリ!!


 足元が光ったと思ったら、僕の隣に、茶髪で三角形の眼鏡をかけ、貴族が着ていそうな透けるような白いブラウスにタイトなスカートのキレイな女性。セレクトリが立っていた。

 「あ!ブヒがいない!ブヒ!ブヒ!」

 「う、後ろにいますよ。」

 ポン!という音が聞こえた気がしたが、振り返ると後ろにブヒがいた。

 「良かった!」

 僕はブヒを抱いて、なでくりまわしてやった。

 「ちょ、ご主人様…。い、今は…(ブヒッブヒッ)。」

 「ごめんなさい。呼び出しておいて、ブヒと遊んで…。」

 「(はぁはぁ)だ、大丈夫ですよ。それではご用件をお伺いいたします。」

 「…うん。」


 僕は今日あったことを、セレクトリに一生懸命に話した。そしてセレクトリは言った。


 「山がないなら、山を作ってしまいましょう。」


 …。


 「え?」

 「超異次元召喚LV6のガイアを召喚すれば山ぐらい簡単に作れます。」

 「あ。僕、まだLV3…。」

 「大丈夫。私がバイパスになって、ガイアをつなぎますから。それでは山のほうに行きましょう。」


 森を抜け、山裾から、生まれてからずっと見続けた双丘のキレイな双子山を見上げる。


 「ここら辺?」

 「そうですね。ここらへんで十分です。(ブヒッ)」


 スキル!≪超異次元召喚≫


 ・MP90% ガイア バイパス接続


 ガイア!!!


 バシィバシィバシィバシィバシィバシィ…


 今までにない大きな空間のひび割れがおき、茶褐の肌で筋骨隆々の巨人が現れた。


 「山を作ってお願い!!!」


 両手を空に突き上げフン!フン!フン!と筋肉を膨張させると、双子山の間が盛り上がり、双子山を押しのけながら、にょきにょきと双子山より高い山が生えた。山の中腹がどんどんと緑色になり木々が生い茂っていく。

 山が完成するとガイアは褐色の肌では想像できないくらいの白い歯をキラリと光らせて異空間に帰っていった。


 あまりの出来事に、呆然とその山を眺めていると。空を飛んでライラがあらわれ飛びついてくる。


 「ニカか!見たか?!すごかったのじゃ!山が生えたのじゃ!山が生えたのじゃ!巨大なハゲのおっさん妖精を見たのじゃ!!!」

 「う、うん。」

 「ところで、なんで、豚を抱いて森にいたのじゃ?」


 食料を探していたことをライラに伝えると、山ができたので今後は大丈夫じゃろうと村まで送ってくれた。


 その夜。


 ブヒを抱きしめながらベットに転がっていると。ふと、おかしなことに気づいた。

 「あれ?そういえば、セレクトリ読んだときMP減らなかった。」


 ニカに抱かれている子ブタは、ニカからゆっくりと目線をはずすのであった。


 ――ガイア

  超異次元の土木工エンジニア

   バイセップスクエイク

    広範囲の地面を隆起、陥没させて一律ダメージを与え、付属効果で自然を調和した整地を行う。

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