第6話 睡眠学習開始

その日の夜。色々とあった一日と別れをつけるべく寝床に着く。

シズとトゥカは同じベットで並んで横になる。トゥカは、先にお風呂を済ませもう寝てしまっている。話し相手が寝てしまったシズも、すぐに寝ようと目を閉じ暗闇の世界に入る。


「おやすみトゥカ。 良い夢を」


気が遠くなりかけたその時、不思議な感覚に陥る。それは吸い込まれるような感覚でもあり、酔っているような感覚でもあった。




ズシンッ!!


シズは気づくと尻もちを付いた。


「いった~。 え、なに?!」


回りを見渡すと、そこは普段と変わらない家の中だった。寝る前にみた光景と同じ、シズとトゥカの家。シズは、ベットから落ちたようで、シーツが脚に絡まっていた。


「んも~、トゥカ寝相悪くな―――」


初めはトゥカにベットから押し出されたものだと思っていたシズだったが、後ろを振り返り、その考えは違うものだと悟る。


『ア……ア"ア"ァ』


そこにいたのはトゥカだったが、いつもより様子がおかしい。不自然にベットに立つその姿は、まるで獣そのもの。目は紅く光り、体に今まで見たこともない模様が浮き上がっている。


「ど、どうした……の?」

『―――ア"ァ?』


光のようなものが一瞬トゥカを覆い、気が付いた時にはシズの目の前に来ていた。


「トゥ、ガア"ァ"ッ!!」


右手をトゥカの頬へ持っていき名前を呼ぼうとした時、口と鼻から勢いよく大量の血が漏れてくる。


「?!!」


恐る恐る自分の身体を確認すると、そこには信じたくない光景が広がっていた。トゥカの右腕が、シズの左胸を貫き、肘のまで埋まっていた。

そう、トゥカはシズを殺めてしまったのだ。


ァんえェなんで……」


シズはそのまま前に倒れ込み、トゥカにもたれ掛かると同時に意識を失った。




ズシンッ!!


「えっ?!」


シズはまた尻もちを付いていた。それも先ほどと同じ状態で。


「そ、そうだ! 私、トゥカに胸を貫かれて…たはず……な…のに?」


急いで自分の身体を手と目で弄る様に確認する。

だが、ない。貫かれた傷がない。さっきトゥカに貫かれた傷は、シズの身体の何処にもなかったのだ。すると、あのトラウマのような声が後ろから聞こえてくる。


『ア……ア"ア"ァ』


後ろを振り返ると、ついさっき見たトゥカの姿があった。


「なんなのこれ」

『―――ア"ァ?』


すると、またも光がトゥカを覆う。その瞬間、シズは観察眼を発動させ、右に大きく飛び跳ねる。トゥカは先ほどまでシズがいたところに、右手を大きく伸ばしていた。


「なるほど~。 そういうことか」


シズの目に映っていたのは、トゥカのステータスと自分のステータスだ。そこには次のように書かれていた。




【トゥカ・リティナ】

職業:村人

種族:獣人種(狐) / 年齢:15 / 性別:女

Lv.01(上限Lv.99) / Exp:110 / 150

HP:105 / 105 MP:06 / 21

STR:32 ATK:28

DEF:14 AGI:52

LUK:11

所持スキル:『光源こうげんLv.01(上限Lv.10):発動中』『―――』『神獣解放しんじゅうかいほうLv.10(固定・・Lv.10):発動中』


【シズ・マークラス】

職業:村人

種族:人種 / 年齢:15 / 性別:女

Lv.01(上限Lv.99) / Exp:000 / 100

HP:45 / 45 MP:0 / 0

STR:15 ATK:08

DEF:02 AGI:11

LUK:07

所持スキル:『観察眼Lv.01(上限Lv.01)』『睡眠学習Lv.01(上限Lv.10):発動中』




「まったく、ひどいスキルだよ。 大切な睡眠時間だというのにさ」


この観察眼では、発動しているスキルは言葉として“発動中”と見れるようで、自分のスキル『睡眠学習』にもそれが付いていた。それ以外に、発動しているスキルの情報は、使用しているとレベルに関係なく見れる。

トゥカの異様な姿の原因もスキルのせいだと分かり、少し安心する。


「まあでも、ここが私の夢の中・・・・・だということが分かれば怖いものなしだよね」


するとシズは、右手に棒状のようなものを握るかのように手を丸める。そのまま今日会ったの門番さんの剣を強く想像し始める。

腰にぶら下がった状態でしか見ていないから想像できないけど、中身は今まで見てきた剣でごまかす。


「できた。 ―――来い。 我がつるぎよっ!!」


シズがそう言葉を発すると、右手に身の丈に合っていない剣が生成される。今までまともの剣を握ってこなかったシズにはかなり重い品物だった。


「うわっとっと。 落としちゃうと―――」


視線が一定の速度を保ち低くなっていく。気づくと身体の感覚はなく、自分の身体全身が見える。だが、その身体には人間に必要なパーツが1つ足りなかった。

ここで、シズは大きな失敗を犯したことに気づかされる。それは剣の創造に集中するあまり、神獣と化したトゥカに注意するのを忘れていたのだ。

トゥカは剣に気を取られていたシズの隙を突き、また光を纏わせ接近してきていたのだ。


「(ちょっと強すぎない?)」


地面と衝突する手前で、またシズの意識は途切れた。

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