1.1.5 聖堂ショウタ

医学部入学式にて。


 「やあ皆の衆^^ご機嫌よう^^僕は聖堂ショウタ^^この日本で一番の名医になる男だ^^僕は3歳でピアノもバイオリンなど、多くの楽器を熟した男だ^^それに、僕はハンサムなんだ^^鏡は僕の親友だ^^たくさんの女の子から毎日のようにファンレターが届くよ^^僕は誰よりも僕が大好きだし、君もきっと僕の事が大好きだ^^あ~モテる男はツラいよまったく^^


さてさて、僕は去年TK大学の医学部へトップで入学したんだ^^そう、トップで^^つまり今年で2年生になるよ^^僕の弟は今年農学部へ入ったらしいんだけど、まあアイツのことはどうでもいい^^聖堂家は先祖代々TK大学医学部卒業、そしてみな首都東京国際総合病院の院長になっているんだ^^そう、ご察しの通り僕の父はあの有名な聖堂シン^^お父上は僕の誇りであり、憧れだ^^


そんなお父上が明日、農学部と医学部の新入生たちに講義を開くらしい^^きっと例の特殊エキスの紹介だろう^^まだあまり研究が進んでいないのにも関わらず、新入生たちにTK大学の素晴らしさを紹介するなんて、なんてお心の広いお方だ^^そんな素敵な方を父に持てる僕はなんて恵まれているんだ^^


そんなわけでせいぜい学校生活を楽しみたまえよ^^新入生諸君^^」


自己紹介を込めた在校生からの新入生へ向けての挨拶を終えた聖堂ショウタは、入学式が行われていた医学部第一特別講義室から出て行ってしまった。そして、医学部の入学式は無事終わった。


ショウタは入学式での挨拶を終え、校門から出た。彼が根津駅へ向かう途中、艶のある黒く長い髪を春風になびかせながら歩く可憐な美少女を見つけた。それは生物飼育館から家へ帰る途中のエミだった。


 「ハッ、、なんと美しい、、僕はこの神から与えられし絶好の機会を逃すわけにはいかない^^」


ショウタは走り、エミを追い抜いた。そして振り向き、


 「やあ^^この後僕とお茶でもどうだい?^^」


エミは突然後ろから出てきた見知らぬ男に声をかけられ、とても驚いた。髪はワックスで固めてあり、鼻筋の通った綺麗な男だ。彼の胸にはTK大学の校章が輝いている。


 「えッ、あ、誰…?すみません、スーパー行くんで。」


 「では僕も手伝ってさしあげよう^^」


すぐに返事がをしてきた。体の距離が近く、気持ち悪い。エミはうっとうしそうに


 「あ…いえ、いいです。」


と応えた。エミはその男に外面的な嫌な点は見られなかったが、何しろ怪しい男であった。


 「^^;名前だけでも伺ってもよろしいかい?^^;」


 「…まず自分から名乗ってからどうですか。さようなら。」


エミはショウタをかわし、そそくさと走り去った。ペースを乱されたショウタは怯んでいたが、とっさの判断で、エミの走る後ろ姿を自分のスマートフォンで撮影した。彼は初めて自分から声を掛けたのにもかかわらず、その誘いを断られたのだ。彼のプライドは酷く傷ついた。


 「必ず我が物にしてやる」


ショウタは親指の爪を強く噛んだ。

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