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 そんな二人を、沈みかけた太陽の光が淡く照らす。

「ねぇ、りょう君。宝物はこの缶に入れておこうよ」

 瞳は足元に転がっている、今日おやつに持って来たクッキーの丸い缶を指さして言った。

「良いね! あっ、そうだ! ねぇ、コレに手紙を書いて一緒に埋めたら良いと思って持って来たんだ!」

 良はそう言うと、ポケットから紙切れ二枚と小さな鉛筆二つを取り出す。

 瞳は、良のその提案を喜んだ。

「素敵! じゃあ、大人になったりょう君に手紙を書く事にしようかな」

「じゃあ、僕は大人になったひとみちゃんに手紙を書くよ!」

 二人はさっそく手紙を書いて、宝物と一緒にそれをクッキーの缶に閉じ込めた。

 お互い、手紙の内容は秘密にして、大人になった時に二人で読み合おうと約束をした。

 二人はまた、穴を掘る作業に興じた。

 そして、夕闇が降りると缶を穴の中に隠して二人はまた明日と言い合って別れた。


 何て素晴らしいんだろう!

 何て楽しいんだろう!

 今日という日は特に! 特に! 特に! 特に! 特に!


 次ぎの日も、またその次ぎの日も、楽しい遊びが続けば良い。

 そう思って二人はそれぞれの家へスキップして帰った。




 その日の夜の事だ。

 若い女が一人、町の中を全力で走っていた。

 彼女の顔は恐怖で凍り付いていた。

 走る彼女の後ろを、男が一人付いて来ていた。

「助けて! 助けて!」

 彼女は大声でそう叫んだが、その声は夜の町に空しく消えていく。

 彼女は知らない男に追われていた。

 彼女を追う男の手にはカッターナイフが握られている。

「嫌っ! 嫌っ! 嫌だぁぁ! 助けて! 誰か! 誰かっ!」

 誰にも届かない声を上げ、彼女は走り続ける。

 彼女を追う男も、少しの疲れも見せないで彼女を追って走る。

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