ロープの螺旋模様

 作者が入念に調整した構成が鋭い輝きを放つ傑作。二重(数え方によっては三重)の苦悩を飲み込みつつ、ひたすら十字架を背負って生きる主人公の姿は決して他人事ではない。『悲劇』それ自体がペルソナを奪われ、幕を引きちぎられ、挙げ句にステージをもなかったことにされる無限の喪失……まさに現代人全てが抱え得る漂白された自我の痛みだ。新たなルームシェアは心理の箱庭ではなく氷の棺桶となる……。

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