儚いのは人の夢

おや、それはそうともう四人も救ってしまいましたか。 なかなかいいペースですですね。 とは言っても流石に四人も救ってしまうと、周りがまるで血の海です。


血そのものなのですけれどね。


それに、

 

「キャアアアアアッッ!!」

 

 まあこうなりますよね。 

 

 錆びた鉄にも似た芳しい匂いも辺りに漂っていますし。

 


 とりあえず、

 

 ザンッ

 

 はい、五人目。

 

 にしても素晴らしい切れ味です。無造作な横薙であっても、切った首が落ちないほどとは、

 

 「「「うわあああああ!!!」」」

 

 おやおや、流石に皆さん気づいたご様子で。

 

 にしてもその悲鳴はないんじゃないでしょうか。 人がせっかく救ってあげようと善意で以てしていることですのに。 

ああ少し嘘を付いてしまいましたね。

善意だけではありません。

快楽もありますよ。 

 でもよくよく考えてみて下さい。 私と麗華はその肉体を斬って極楽へと導くことで快楽を得る。 そして斬られたあなたは理想郷ユートピア、即ち極楽へと旅立つ。 お互いにウィンウィンではありませんか。 ああ、もしかして解放されるのが怖いのですか。

でも心配することはありませんよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何処にも逃げ場なんて無いんですから。

 から。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず、あのOLさん達の集団を救いましょうか。

 

 体の力を抜き、大きく深呼吸をします。

 

 体重を徐々に前へ掛け、バランスを崩す一歩手前で一気に脚に力を込めます。

 

いいですね。この感覚。昔を思い出します。

体の内に流れる力の奔流を意思で統制する感じです。


さあ、いきましょうか。


 瞬間、弓から放たれた矢のように体を前へ打ち出した。

 

「ひっ」

 

 いいですね。 その恐怖に歪んだ顔。 クセになりそうです。でもそんな趣味は私にはないのでサクッと救っちゃいます。

 

 ザンッ

 

 いいですね〜。一気に四人も救えました。もう一度居合いを繰り出してみましたが先程よりも技のキレ、スピードが上がっています。 

 

 このままOLさん達の後ろにいるサラリーマンさんたちも救ってしまいましょう。

 

 再び前に歩を進める。 その間に一人鞄を盾に向かって来たが、その手、足を斬り飛ばし頸に凶刃を深く沈め沈黙させる。

 

 そして、腰が抜けたサラリーマン二人の前へと血塗られた『救済者』は立ち塞がった。

 

「お、おおおお願いだ! 助けてくれぇ!」

 

「はい、分かりました」

 

 ザンッ

 

 

 

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