第12話 ライセス王


「おい!!そこに誰かいるのか!!!?」


騎士の叫びに兵士達は一斉に自分達が隠れている茂みを見た。

--どうする!?どうする!?くそっ!めんどくさい!!全員返り討ちに……!

「キュー♪」

「む?これは……子供のドラゴンの様ですな」

--なんでそこにいる小ドラゴン!!?

色々と考えている隙に手元にいた小ドラゴンが茂みから抜け出し、騎士の前に飛び出してしまった様だ。

「昨日例の男によって討伐されたドラゴンの子供だろう。そんな下等生物よりさっさと男を探せ」

男は淡々と言っているがその言葉には威圧感がある。王という事は間違いない様だ。

「はっ!ドラゴンの子供はどうなされますか?」



「殺せ。目障りだ」




--は?


「御意に」

騎士は無表情に剣を抜き、小ドラゴンにめがけて下ろす。その瞬間スローモーションの様に時間が流れた。


--でもここで助けに行ったらせっかく手に入れた快適な隠居生活ライフがなくなるかもしれない。それに小ドラゴンの母を殺したのも仕方のない事だった。今助けなくなたって……


グルグルグルグル、と色々な考えが頭をよぎり、ふと小ドラゴンを見る。騎士の剣が当たろうとする瞬間、涙目で怯えた目をこちらに向けた。


--ダメだ助けなければ!!!


「『氷結アイス』!!!」


唱えた瞬間、青い光とともに周りにいた兵士達や騎士、男の身体が凍る。しかし小ドラゴンを凍らせない様にしたせいで大体の人間は胸から頭までが凍らなかった。人間どもが信じられないという顔でこちらを見る。

「小ドラゴン!!」

そんな人間どもを無視し、急いで小ドラゴンを抱きかかえる。どうやらどこも凍っていない様だ。--ほっ、と安心してため息が出た。

「ライセス王!ご無事ですか!!?」


慌てる騎士の問いを無視し、ブツブツと独り言を喋る男。気味が悪い。茂みの中では見えなかったが、その男は黒髪に黒目と普通の人間に見えるが……

「話に聞いていた旅人銀髪男の子供か。ふむ……、その年でこの魔法を操れるとは親子共に欲しくなって来たな」

ニヤリと笑ったその目に身の毛がよだつ程の嫌悪感を覚えた。魔王時代何度も見たことのある、自分のやりたい事の為なら何でもするキチガイの瞳だ。

「『燃焼』」

男がそう唱えると辺りの木が燃え、周りの氷が溶けていき兵士達が自由に動ける様になる。どうやら自分と同じ魔術師だった様だ。

--一気に形成逆転されたな。

「今すぐに子供を捕まえろ!絶対に殺すな。生け捕りにするんだ!」


男が叫ぶと周りの約二百人の兵士と騎士が襲いかかってくる。逃げ道も抑えられ、正に絶体絶命だ。六歳児の少年ならすぐに捕まるだろうが……


--元魔王の六歳児ならどうだろう?



「『水龍天罰ザパック・ダメージ』」


自分の身長以上ある杖を一振りした。すると青の光が龍の形をした水に変化し、男達を襲う。

「『斬鉄剣』!!」


しかし当たる直前に龍が弾け、水がかかった程度の威力しかない。あの騎士が剣術を使った様だ……だが


「予想通りだ。『空中浮遊レビテーション』」

ニヤリと、先程の男の笑いに引けを取らない様な悪い笑みを浮かべ空中に浮かぶ少年。お互い得るものの為には、手段を選んでいられないからだろうか?

「……っ!」


いち早く少年の意図に気づいたライセス王が兵士達に命令を出しているのが空中からわかる。しかしもう遅い。

「人間ごときが図に乗るな!!『雷龍鉄槌サンダー・レイ』!!」


大きな黄色の魔法陣が少年の頭の上に現れ、雷の拳が兵士達を襲う。バリバリバリ!と音がした後何事も無かったようにオーガ森は静まり返った。

「ちっ!やはり魔術も弱くなっているな。全員殺すつもりだったが気絶程度になってしまうとは……」


空中で浮かぶ少年は小ドラゴンを亜空間に入れすぐにその場を離れた。ライセス王は悔しそうにその少年が去るところを見ていることしかできなかった。

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