神様がそう決めたから(現代劇)
宗教的禁忌
「この闇のゲームの結果は絶対だ」
とアニメのキャラクターが言った。
そうなの、と、ぼくは思った。
「勝者は敗者から何でも、一つだけ、自由に奪うことができる」
とも言った。
ふうん、と、ぼくは思った。
「神がそう定めたのだ」
と、十二話中の五話目くらいでようやく説明した。
なるほどなあ、と、ぼくは思った。
最終話が終わるまで、それ以上の説明はひとつも無かった。
そのアニメには、デスゲームモノに必ず出てくる「運営に突っかかって殺される人」はいなかったし、首輪に仕込まれた爆弾も、銃で脅しつける憲兵も、運営が用意した大金も、不思議な力による強制力も、人の心を物理的ないし社会的に縛り付ける要素は何一つ出てこなかったけれど、「神がそう定めた」という説明が、一度だけあった。
じゃあ仕方ないね、と、ぼくは思った。
端的に言えば、ぼくが課長待遇職を包丁で刺したのは、それが職場の士気を低下させる者であったためだ。それ以上でも以下でもない。
ワークシェアリングは人類にとって価値ある思想であり、正社員の条件に労働時間や日数を定めることの愚かさは既に広く知られた物である。
まともな人類は一日五時間もの労働を行えば煙を吐くし、七日に三日は休養を要する。これは前提として確かな話であるけれど、だからと言って、週休二日九時間勤務の人間が週休三日五時間勤務相当の労働しか行わないのは理に反するし、そのような存在を雇うことは単純な金銭的損失のみならず、周囲の人間の思想にも悪影響を及ぼす。
労働は国民の義務であるけれど、それ以前に、禁断の果実を食した人類への罰である。
「だから、仕方ないじゃないですか」
ぼくは呼び出された社長室でそう証言したし、警察の取調室でも、法廷でも同じことを言った。
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