記憶保持屋

天崎 瀬奈

プロローグ

それは山の奥にあった。

街の騒がしさとはかけ離れ人々の喧騒の届かぬその場所で

それはひっそりと存在していた。

キィ。

木造の少し古いドアが音を立てて開く。

途端にほんのりと苦いコーヒーの香りが身をつつむ。

きっちりとしたスーツに身を包んだ男が豆を挽いている。



「いらっしゃい」



男に話しかけられとっさに「どうも」と返せば愛想のいい笑顔が帰って来た。

男は手元の作業を止めこちらへと近寄ってくる。

その様子があまりにも変な話だが現実味がなく思わず後ずさる。

男が口を開く。

息を飲む。




「 あなたは誰の記憶を望みますか 」

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