第一話 出会い

彼女と初めて出会ったのは、自宅近くにあった占いの館へと続く行列。

よく当たるとテレビで特集が組まれ、その日はかなりの行列だったと思う。

1時間につき10.5人が並んでいた。

そんな中、僕の後ろで、彼女は徐々に並びはじめていた。

まずは髪。

艶のある綺麗な長い黒髪が地面に現れた。

次に耳である。

その小振りで柔らかそうな耳から女の子だと確信した。

そして頭蓋骨。

本来頭蓋骨と表皮はセットで出現することが多い。

しかし彼女は見ている限り、体のパーツが全くの順不同でやってきてしまっている。

そもそも普通は頭部より先に足からくることが多いのだ。

出現の乱れは心の乱れ。

きっと今この女の子の心はバラバラに裂かれてしまっているんだろう。

この体のパーツのように。

そうして眼、鼻、唇と次々顔のパーツがそろい、最後に脳が来たところで彼女が意識を取り戻した。



「あれ?!やだあたし頭から来ちゃった!!」



僕のすぐ足下で頭部だけの女の子がぴょこぴょこはねている。

真っ赤な顔をしながら。

かわいい。



「あの・・・下の方が来るまで持ってましょうか?ここ車も通って危ないですし」


「え、でも・・・」


「僕も前に胴以外が先に来ちゃって、すごい大変だったんです。困ったときはお互い様ですよ」


「あ・・・じゃあ、少しの間だけ」



しゃがみ込んで彼女と向き合う。

彼女は恥ずかしそうに目を伏せ、少し困ったような表情を見せる。

僕はゆっくりと腕を伸ばす。

彼女の柔らかな頬に指先が触れる。

驚いたのか、彼女がビクッと頭部を震わせこちらを見た。

目が合った。

風が吹く。

二人を包んだその風は、焼き上がったばかりの菓子パンのにおいを含んでいた。

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