誰かのために。

@UMA6452

第1話 新人ケアマネの誕生

『えー、柚。過去問といてないの?試験2週間前なのに!やばいよ、間に合わないんじゃないの?』

柚は水木先輩と休憩室でお弁当をつついていた。

『先輩、どうしよう…。今年もダメかなぁ』

柚はすでに介護支援専門員(ケアマネージャー)を片手で収まらないほど毎年受けているのだ。

日々、お年寄りのご飯、排泄、お風呂…時には話し相手、折り紙の先生や体操のおねぇさんにもなる。体力勝負の世界、毎日くたくたで帰り勉強なんて続くはずない。参考書を開き、3ページも読むか読まないかで、深い眠りに。

夜勤で本を開くと、陽気なおばあちゃんが出てきて『あんた、ご飯食べてないよ。お腹が空いて死にそうよ。』と言われ、お茶を飲みながら座談会の始まり。


 やっぱり、仕事しながら勉強するのって無理だよなぁ…。


水木先輩はすでに介護支援専門員に合格していた。

『柚、勝負はこれからよ。今日本屋にいって薄い過去問買いな。で、解きまくる。わからないとこは、解説読む。これやるだけでも違うからさ。もう、何年も受けてるんだから、問題パターンも似てるし、制度が変わったりするけど、いけるから!』

『ですかね…。』と言いながらも、夕方本屋にいた。


あれから2週間…必死で勉強。


そして三ヶ月後…なんと筆記試験に合格。喜ぶのもつかの間、地獄のような研修が始まり。


研修ではたくさんの仲間ができた。年齢層も職種もさまざま。

『柚ちゃんは、研修終わったらケアマネやる?』

と隣の席の七海さん。

『ん~どうですかね。正直大変そうですよね。でも、こんなに苦労してとったし。介護の仕事は面白いけど、年を取ったら正直できないかなぁ。七海さんは?』

『私はしないかな。実習で実際訪問して、プランもたてたけど、正直きついな。書類は多いし。今の職場で看護師のままやってくよ。』

『私もしない。年を取ったら、目も見えないし。こんな書類作るの大変。家族が難しいと何でもしないといけなくなりそうだし。』と、障害のヘルパーさんをしている畠田さんがいう。


でも、せっかくだし。お給料も上がるしな。私はやってもいいかなぁ…と思っていた。


4月になり。無事に登録終了。晴れて介護支援専門員の資格をてにいれた。


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