第14話動物だって言葉がある

 数日後、夜の人気のない公園でカンガルー一匹、

イノシシと豚のカップル、例の兄と妹が集まって話し込んでいた

「ところでどうしてわれわれは違う種族なのに、

 お互い言葉が通じているのでしょう。」

とブーブが頭の中にいつも頭の中にあった疑問をカンガルーにぶつけた。

 するとカンガルーはもったいぶって咳払いしながら、

「えへん。もともとはるか昔、われわれ地上の動物たちはみな、

 同じ言葉を話して心が通い合っていました。

 ところがあるとき、動物たちは寄り集まって相談した結果、

 こともあろうに、天まで届く高い塔を作ろうと

 決めて早速作業に取り掛かりました。」

「それがどうしていけないことなのさ?」

とボーイッシュな妹が尋ねると、

「問題は塔を作った材料が動物たちのうんこだったことです。

 一番下がナウマンゾウの大きなうんこ、上にいくにつれ、

 だんだん大きさが小さくなって、一番上はネズミのうんこでした。

 塔は高くそびえたち、今にも雲を突き破ろうとしました。

 しかしその悪臭は世界に満ち満ちて、神様たちの世界にも

 気が狂わんばかりの強烈な臭気が流れ込み、天上界は大騒ぎになりました。

 たまりかねた神様たちが会議を開き、ついに

 動物たちから言葉を取り上げ、今に至るのです。」

とカンガルーはしめくくった。

「わあ、すごく臭そう。でも今ここにいる

 わたしたちはなんでお互いに言葉が通じるの?」

とトン子が尋ねた。

「それは鼻が曲がるほどのあまりにひどいにおいのせいで、

 頭がぼけてしまった神様の失敗で、ほんの少数の

 動物たちの言葉を取り上げるのを忘れてしまったのです。」

とカンガルーが答えた。

「うんこでタワーを作るとはね。やるじゃん。」

と一同大笑いした。

「さて、そろそろ故郷に帰るかな。」

とつぶやくと、カンガルーは突然ジャンプして、

ひとっとびで雲の上に消えてしまった。

「えっ、もしかして神様だったの?」

と皆があっけにとられていると、

カンガルーが着ていた薄手のコートがベンチの上に

置き忘れられていた。

「肌寒いからちょっと借りるね。」

と図々しい兄がそれを早速羽織った。ポケットの中に手を入れると、

一枚の宝くじが入っていた。

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