そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります/川上未映子

 エッセイ。もとはブログだったらしい。確かにすごく面白い。ぜひ出版したい、と思った人がいるの、よくわかる。


 川上未映子さんは当時は音楽活動をしていたらしい。なるほどね。私も高校生までは発達特性丸出しの手紙をしたためるのが趣味であったけれども、なんとか「ハンコを押したような社会人になれんかいな」と思ってやめてしまったのよ。I wanna be a stampman!


 どこを切っても同じ柄が出てくるような。均質で。まじめな。大人に。あこがれていた。なりたかった、堅気の人に。シャチハタスタンプガイに。なりたかった。




 うちの親族にも堅気の仕事をしている人は少ない。自営とか漁業とか遅刻をとがめられない新人類として認識されている勤め人とか、うっ、血反吐が。つまり私はそういう家系に生まれた自分を恥じていたのであって、大人になってまともな社会人になりたかった。


 


 それはさておくとして、川上女史のこの烈しさ。異性に対する熾烈さ。を赤裸々につづるこのふてこさ。そして妙なかわいらしさ。


 可愛い。これが二千六年に出版されていたとは、全然知らなかったよ。川上氏の芥川賞受賞作はブックオフで値崩れを起こさず売られていたので、きっと人気なんだと思う。


 どんな小説か知らないから読んでみたい気もする。

 ような怖いような。


 こわくないですか? こういうおんなのひと。

 自分も含めて。烈女とか火の輪型とか西太后とか。

 だって彼氏の頭を殴って出血させたことを淡々とブログに書く人やで。それもお仕事報告用のブログよ。桁が違うぜ。私は暴力とは小学生の頃に手を切ったんですよ……ほんとなんだ信じてくれよ。



 でもこういう女性が活躍しているのを見ると安心する。生きててもいいんだ、という気持がしてくる。



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