あの子の考えることは変/本谷有希子

 ダイオキシンの毒素で「症状」が出る、と信じている日田。セフレをモンスターに変えるべく料理をふるう巡谷。二十三歳。ふたりの同居生活についての一幕。



 ふたりの住んでいる街にはごみ焼却場がある。その煙突から出る排煙に、ひとをおかしくする作用があり、政府から「とある症状」を発症した住民に賠償金が支払われるらしい、秘密裏に。という都市伝説を日田は信じていた。自分が臭うのも手記が書けないのもその排煙に含まれるダイオキシンのせいなのだ。


 日田を巡谷は冷ややかに見ている。っていうかちょっと下に見ている。日田は無職、巡谷はバイトをしている。巡谷は自分の方が日田よりもまだまともだと感じていて、彼女はそのような比較対象をそばに置くことでしか自分の正気を信用できない。



 うとましくても、貸した金が返ってこなくても、なんならちょっと相手をばい菌扱いしていても、巡谷は日田を部屋から追い出さない。うるさい住人を相手にしている日田を心配したりもする。


 そんな巡谷は日田にグルーヴ先輩と呼ばれていた。グルーヴが高まってたまにわけわかんなくなるから。



 常に陰気、日田と、巡谷のたまに狂気。ふたりはふたりで生活することでなんとかバランスを保っていた。ところがある日セフレから正式な彼女に昇格することを夢見ていた巡谷が、夢破れて部屋に戻るとベッドに日田が。イラつきから大喧嘩になってしまい、それから日田が本格的に部屋に引きこもり出てこない。


 ふたりの生活の行く末はどこ?






 っていうお話です。日田ちゃんは欲求不満で死にそうなのですが、自分の臭いが怖くて人とふれあえない。世にいう自臭症というやつです。

 巡谷はセフレに妙な執着を持っていて、でもそれは愛情というよりは自分のDカップのおっぱいを肯定してほしい、元カノより私がいいって認めろよ、って感じな気もします。


 そんな日田ちゃんは巡谷の顔を見ていると有り余る性欲が抑えられるんだとか。


 グルーヴ。この高まりを感じろ。っていう一冊でした。自分の人生がグルーブ強めなので抑揚の激しい女の人生を見ると「ウっ」ってなります。ウっ。

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