魔女と出会った転移者

星川 奏詩

第1話 プロローグ


 退屈な日々を過ごしていた。

 俺はいつものように身支度を整えて家を出る。

 駅に向かい電車に乗り、降りた駅から少し歩いたところにある学校を目指していた。

 高校二年生の俺、原田哉太はらだかなたはジリジリとした蒸し暑さを感じながら学校まで歩く。気温は高く、最近は真夏日が続いてる。


 学校に着き、教室の扉を開けて自分の席に座る。朝とはいえ、キツイ日差しの中を歩いたため背中がびっしょりとなっていた。代謝が良いのも困ったものだ。

 そして俺はHRが始まるまでの間を寝て過ごす。



 まわりでは大半の生徒がお喋りを楽しんでいる。

 そんな中で今日も一際目立ち、可愛い笑顔をして過ごしているこの学校で一、二を争うほどの美少女の高梨里香たかなしりかを俺は今日も寝る前に一目見る。彼女の長い黒髪と透き通るような白い肌に豊満な胸は、なんとも魅力的である。彼女と同じクラスになれたことは幸運と言ってもいいだろう。

 他のクラスの連中と比べて俺は運が良かった…とは残念ながら言い難い。

 それは俺のクラスには俺にとっては正直害悪でしかない奴が居るからだ。

 そいつは高梨の隣で今日も他愛ない話をしながら周りにもその爽やかな笑顔を振り撒いている。


 原田翔輝はらだしょうき、サッカー部のエースで先日キャプテンにまでなったイケメン野郎だ。

 成績は平凡だがそれでも運動神経抜群、そして整った容姿は女子から見ればまさに理想的な男だろう。

 今でこそマシにはなったが、入学当初はそれはもうあちこちで騒がれていた。

 俺の通う学校は女子の方が比率は高い。クラスでも男子は10人にも満たない。ちなみに俺のクラスは男子が7人で女子が23人の計30人だ。

 そんな中、俺に話し掛けて来るような奴はいない。それは俺がコミュ障とかでは決してなく、ほかの理由がある。


 それは俺とあのイケメン野郎の名字が一緒なのだ。


 よくある事だとは思う。原田なんてありふれた苗字だ。なんら不思議なことではない。…ただこの学校において被った相手が悪すぎる。

 入学当初、騒がれていたイケメン野郎しょうきと名前が一緒のためよく間違われたものだ。原田翔輝に会いに来たとかいう女子たちの目の前で失望される様子を見せられたり、それが間違いだと教えると、良かった〜、っと安心され、それがほぼ毎日のように続いた俺は、女子に対する怒りと名前が一緒のイケメン野郎しょうきに嫌気がさしたのだ。


 …それに自分で言うのもあれだが、俺だって別段顔が悪いわけではない。個人的には気に入っているし、性格も悪いとは思ってない、常識だってある。これでも成績は良い方だ。

 そんないたって普通の男子高校生である俺は、入学当初にそんな理不尽な仕打ちを受けた。


 ということもあり俺は今日もクラスでぼっちしてる。女子は翔輝の方に群がってるし、あいつも性格は良いから他の男子も仲良くしてる。

 ただ俺は、あいつと友人になろうとは思えず、そして話をしたいとも思わないためこうして離れている。



 もうすぐHRが始まろうとしたが、俺はトイレに行きたくなり席を立った。だが次の瞬間に突如床が強い光を放った。

 訳が分からずそのまま立ち尽くし、あまりの眩しさに俺は目を閉じた。


 そして再び目を開けるとそこは……ゲームや漫画で見たような豪華なお城の中だった。



「ようこそおいでくださいました。突然召喚したこと、大変申し訳ない。私はこの国の皇帝、アルドラ・フォルネだ」


 悪いが状況が理解出来ない。

 ただ呆然と目の前の光景見ていた。俺は、頭が真っ白になり、そして段々とパニックに陥ってきた。

 周りがザワザワと騒めき、一緒に連れて来られたであろうクラスメイトたちも困惑している。

 すると一人の杖を持った者(後ほど分かったが魔術士)がもごもごと何かを唱えるように口を動かしそして、光の粒子が俺たちに降りかかった。粒子を浴びた俺は段々と落ち着きを取り戻していった。他のクラスメイトも動揺はしているものの、落ち着いていっているのが分かった。


「さて、これでだいぶ落ち着いたと思うので、話を続けてもらって大丈夫です。陛下」


 暗い紫色のローブを着た男がそう言うと、さっき皇帝と名乗った老人は話を続けた。

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