5.(わたし) インド風料理 / トマトバンパイア
わたしはおじさん
なすを
たまねぎを刻み、オリーブオイルで薄茶色になるまで炒める。次いで鶏の胸肉を焼く。香辛料に火を通すと、
モロヘイヤ、ピーラーで
鍋に火が通ったので、なすとプレーンヨーグルトを加える。ちょっと味見して、コリアンダーとクミンを足し、カルダモンを加えた。カルダモンは、兄弟分のシナモンほど有名じゃない。けど、牛乳と
ひと煮立ちさせてあくを取り、火を止めて鍋にふたをした。
これが、望美風インドカレーもどきだった。後は、お客さんが来る(おそらく)のを待つだけである。
おじさんがお風呂から出てきた。
「いい匂いだな」
「早くお昼ご飯、食べよう?」
わたしはわざと聞いてみた。
「もう少し後にしよう。朝が
「ねえおじちゃん、わたし、何か用意しとくこと、ある?」
「いや、特には」
「ふうん……」
あくまでも隠しておくつもりらしい。おじさんだけのお客さんなら、そんなことはしないだろう。わたしを驚かせたいのかな。だとしたら、わたしにも関係のある人なんだろうか?
「そうだ、望美、ちょっと見てもらいたいものがあるんだが……」
「なあに?」
おじさんは食卓の上に、奇妙な道具のようなものを置いた。大き目の注射器のような形で、針の代わりに
「名付けて『トマトバンパイア』だ」
「トマト……バンパイア?」
「アイディア商品だよ。
わたしは、その道具の使いみちの見当もつかなかった。
「何に、どうやって使うの?」
おじさんは冷蔵庫からトマトを取り出してきた。トマトのお尻に網かごの部分を突き刺し、注射器のピストンを引っ張った。トマトから網かごを抜く。かごの中には、トマトの種がぎっしり詰まっていた。
わたしは、言葉に詰まった。
「それで……どうするの?」
「望美も料理番組、見るだろ? トマトの種を取り除けという説明が、時々あるよね?」
「種を嫌いな人って、いるみたいね……まさか」
「そうだ。このトマトバンパイアは、トマトの種取りという面倒なことを、一発で済ませてくれるんだよ」
おじさんは、
「これは売れるよ! 最低でも12グロスは作らないとな」
わたしは、何とかしてこれを止めさせなければならないと思った。
「おじさん、わたしが主婦だったら……」
わたしは冷蔵庫からトマトを出して、包丁一本で、三秒で種を取り除いて見せようとした。でも、こんな時に限ってトマトが無い。
「まあ、
どう思う?」
わたしは、おじさんのやる気を
わたしが重い口を開きかけたその時、表でクラクションが鳴った。おじさんの表情が喜びに満ちた。
「来た! ガレージは開けてある。望美もおいで!」
おじさんは、ガレージに通じている庭のテラスへ飛んで行った。わたしも、後からついていく。
ついに、
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