第13話 凡人、厄介事から逃げる。

 あのあと僕は宿をとり、これからの予定を神獣達みんなと話し合った。


 色々と話し合い、互いが感じたことを共有して、出した結論は「さっさとこの国を出る」だ。


 途中で、街に寄るがそこで永住はしない。もっと自由な国に行くことにした。


『しかし、あの男は物凄い我が侭だったわね』

『魔獣に日々怯える人間からすると強い者は手元に残したいのじゃろう。敵になると尚のこと厄介になるしの』

『だけど、その結果的に回すっていうのはちょっと莫迦というか何というか……』

『これで懲りてくれるといいんだけど、多分何か仕掛けてくると思うよ』


 あの男の行動はおかしかった。僕の実力を察していながら、強引に冒険者にしようとするし、寄せ集めただけの冒険者で僕を止めようとしたし。


『というか、土竜なんて何処で狩ったの? トカゲとしか聞いてなかったから僕も驚いたんだけど』

『ワシらが偶に行く地域にいるぞ。前に一緒に食べた時、程よい歯ごたえと染み出るような味が絶品じゃったろ?』

『確かに普通のトカゲより美味しかったけど。ちゃんとした名前ぐらい教えてよ』

『人間が使う呼び方なんて知らないわよ。私たちにとってはトカゲでしかないもの。竜と聞いて、思い浮かぶのはレビィとルティだもの』

『いや、二人並みの魔物が現れたらこの世界の人間じゃ太刀打ちできずに当の昔に滅んでるって』


 方針を決めた後はただただ愚痴を零す会になった。



 翌日、宿を出ると、燕尾服姿の初老がいた。


「朝早くに、申し訳ありません。私、この街の領主に仕えております、ロベルフと申します。申し訳ありませんが、私と一緒に領館へご同行願いますか?」


 領主からの使者らしい。正直面倒だ。さっさとこの街から出たい気持ちが強い。


「すいませんが今から出発するのです。こちらの予定もありますし、今回は遠慮願います」

「そこを何とかお願いできませんでしょうか?」

「要件の概要ぐらいは聞かせてくれませんか?」


 内容によっては行ってもいいけど十中八九昨日のことだろうな。


「私も詳しくは……昨日のこととしか聞かされておりませんので」

「そうですか。では、お引き取りください。私から話すことは何もありません」


 使者に一礼して横を通り過ぎる。


「お、お待ちください!」

「詳細が知りたいなら冒険者ギルド向こうから話しを聞けばいいでしょ。あっちが加害者なんだから。いくら内容が曲解されたり捏造されたりしていても僕はどうでもいいですし。二度とこの街に来なければいい話なので」


 彼の制止を無視して門へ向かう。


『とりあえず王都に向かってみようかな。そこでダメだったら仕方ないけど隣国に行こうと思う』

『その方がいいわ。貴方を飼い殺そうとするところに行く必要はないわ』

『そうじゃの。お主が自由に暮らせるところに行けばよい。無理ならば帰ってくればいいだけだしの』


 皆に相談すると同意と若干の帰ってきてほしいという気持ちが伝わってきた。


『まぁ、のんびり行くつもりだし、腰を落ち着けるのもしばらく後でいいと思うし、好きなようにやるよ』

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