四畳半開拓日記@公式連載スタート!!
@nana777
四畳半開拓日記
チュートリアル編
第1話 変な病気とか怖いもんな!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
■四畳半開拓日記02 8/17発売です!■
仕事帰りのまったり温泉や、山田村での魚釣り大会など、WEB版既読のみなさまにもご満足いただける内容になっています
お気に召したら、ご予約などしていただけると励みになります!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
一泊二日の社員旅行から帰ったら、アパートの畳が腐っていた。
でろでろだった。
なんか臭いし、表面が溶けかけている。
いったい、なにがあった?
飲みものをこぼしていた?
それとも、泥棒かなにか?
ひとん家に入って畳を腐らせる泥棒ってなんだよ。
もはや、そういう妖怪じゃねえか。
仕方ないから、大家さんに連絡した。
『畳が腐ってるって、どのくらい?』
「表面がでろでろになってて……」
『面積は? もしかして、部屋全体が?』
「いえ……」
改めて、部屋を見回した。
30半ばの独身男性の一人暮らし。
まあ、テレビとちゃぶ台と、生活のためのあれこれ。
そんな四畳半の和室だが……。
「真ん中の一枚だけ、ですね」
いつも布団を敷いている場所が、見事に腐っている。
正直、仕事のあとで疲れている状態でこれは精神的にきつい。
『山田さん、もしかして危ない薬品でも扱ってるんじゃないの?』
「いやいや! そんなことないです」
『どっちにしろ、そういうのは入居者のほうで処置してもらわないと』
「……ですよねえ」
あっさり切られた電話。
とにかく、おれは疲れていた。
社員旅行の直後のトラブルだ。
特別、うちの会社がブラックとは言わないが、それでも楽しいものじゃない。
「……とりあえず、寝るか」
腐っているところが抜けると怖いので、脇に布団を敷いて寝た。
問題は、翌日だった。
目を覚ますと、朝の五時半だった。
帰ってすぐ寝たから、頭は案外すっきりとしている。
出社まで、寝直すか?
そう思ったが、部屋の中がえらいことになっていた。
畳が溶けている。
ぐずぐずだ。
どうしてこうなった?
まさか、変な毒でも部屋に充満してる?
でも、それなら部屋全体がそうなってるだろう。
なにより、おれが無事じゃないはずだ。
……疲れってすげえ。
下手したら、あのままあの世行きの可能性もあった。
とにかく、いまは状況の確認だ。
なぜ、この畳だけ腐っているんだ?
右手をタオルでぐるぐる巻きにした。
さらにコンビニのビニール袋で包み込むと、手首できゅっと締める。
変な病気とか怖いもんな!
「よし、やるか」
おれは意を決すると、腐った畳に手をかけた。
力を込めると、ぼろっと崩れた。
思っていたよりも、すんなりと畳が持ち上がる。
一枚一枚、ゆっくりとビニール袋に収めていった。
腐った畳を引っぺがすと、床板が顔を出した。
予想はしていたが、畳下板も腐っていた。
これ修繕費、どれくらいになるんだろ。
とりあえず、板も剥いでみる。
そーっと、そーっと。
ああああ。
なんか変な動物とか棲みついてたらどうしよううううう。
「……あれ?」
おれの部屋は、一階の角部屋だ。
アパートの向きのせいで、日当たりがいちばん悪い場所だ。
だから、なにかが棲みついている可能性もある。
そう思っていたのだが、そこにあったのは少し予想の斜め上だった。
床下の、地面の上。
……そこにあったのは、小さな家だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます