第43話 船上料理人

 料理、そしてパスタというからには負ける気はしない。相手が未来となれば尚のことである(まぁ、先日家に来て食べさせたし……)。


「判定5-0、勝者は萩原」


 歓声がそこら中から聞こえるというのは悪いものではない。爺さんも判定を言いながら何やら嬉しそうである。

 俺とは反対のトーナメントにいる零も試合のようだが、まぁどう考えても負けるということはないだろう。




 「決勝戦、萩原VS東雲」

まぁ、予想はしていたがまさか本当にそうなるとは……。しかも、俺も零もここまで判定は5-0の完勝で上がってきているため、会場のボルテージはかなり上がっていることは言うまでもない。


 「涼さん、ついに決勝ですね♡」


 「あぁ、予想はしていたけど相手が零というのは俺にとってはかなり分が悪い。」


 「私は決勝まで行けば涼さんと対決できると頑張ったんですよ♡」


 「さて、お題はなんだろうな……和食と言われたら俺は棄権するから。」

 

ここまではお題に救われてきたというのは正直に言ってかなりある。そして、この零に和食で一戦交えようなど敵うわけがない。丸腰で軍隊に凸るようなものだ。


 「で、ですが私も洋食と言われてしまったら……」


和食のクオリティには及ばないが、洋食も零はうまいからそんなに自信なくすものではないと感じるのだが…。


 「決勝戦のお題は、日本料理」


 爺さんがお題を大々的に発表した。そして俺は、これを聞いた瞬間に無意識にもそっと手を挙げて審査委員に対してこう告げた。


 「すみませんが、棄権します。勝てるわけがありませんので。」



 「「「えっ?」」」


 会場にいた全員が呆気にとられている。当たり前だ、これまで判定5-0で勝ってきた人間がお題を聞いた瞬間に負けを認めたのだから。


 「そうか、では萩原の棄権により、優勝は東雲零」


 爺さんは俺の言いたいことが伝わったらしく、零を優勝とした。さすがに料理を作らずにというのはつまらないので、零は料理を作ることとなったがこれがまたすごかった。料理長や副料理長がとてもとても褒めていた、いや何なら料理を教わりたいくらいの勢いであった。会場もその見た目などから大いに盛り上がっていた。

 零曰く、これまでの最高傑作だそうだ…。

 優勝のご褒美として零には、ペア温泉旅行券が与えられた。


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