第21話 家でも勉強、誤解は避けたい

 電車で寝たせいなのか帰り道での零には元気が戻っていた。だんだんと日が長くなっているためさほど暗くなる前に無事、家に到着した。黎明高校の人と会った時は少しびっくりしたが、そんなにお堅い人という印象がなく話せてよかったと思う。


 「すぐに、夕食の支度をしますので」


零はほんとによくできた人である。素早く丁寧に食事の準備を始める。しばらくして、夕食の登場である。


 「今日は、チキン南蛮でーす。どうぞ」


 「うん、おいしそうだね。」


美味しそうという仮定の表現が零の場合は確実に現実である。そう、食べる前からおいしいの一択なのである。


 「そういえば、今年はゴールデンウィークが10連休になるんですよね?」


 「あぁ~、そういえばそうだね。その翌週にテストだから今年は暦に救われたって感じだね。」


 「10連休はどうしますか?」


 期待にあふれた視線をくれるが、その後にテストがあるという現実の手前、楽しいことはあまり期待できない。


 「その前に零の課題を終わらせないとな」


 「そんな~、終わりませんよ~。」


 「終わらせたら、10連休に少しは遊べると思うんだけどなぁ~。俺もまた手伝うし~。」


 「はい!、終わらせます。」


 テストのための勉強ではなく、課題を終えるための勉強となってしまったが人類の大半はそうであろうと思い、特段、言及はしない。というか、俺が勉強会とかに出ずっぱりで零といなかった時に零はどう耐えていたのかという疑問が生じる。

 


 そうして、食事や風呂を済ませ、本日の勉強タイム第二弾が俺の書斎で開催される。俺の書斎の机はL字型の大きいものであるからサイドテーブルに零をという位置取りである。俺の左側に零が俺の方向を向いて勉強のためにさながら家庭教師である。同じシャンプーなのに、どうして女性は良い匂いなのかという疑問を抱く場面に出くわすが、耐える。


 「涼さん、これで合ってますか?」


唐突に零がこちらにぱっと頭を上げてくる。俺は、その香ってくる甘い匂いにドキドキするが、耐える。なんで、勉強会とかに行ってた、バカかよ。こっちのが全然いいじゃん。


 「うーん、なんでsinθの値が1を超えているのかな?」


 「きゃあーー、計算ミスしてましたーー。」


 「気を付けてね。sinとかcosが1を超える、もしくは-1より小さかったらどこかで確実にミスしている証拠だから。」


 「はい!」


 素早くの俺の発言をメモして、解きなおしを始める。俺は、課題は終わったので、自分の別な参考書の問題を解く。誰かからやれと言われた問題よりも自分の解きたい問題やるのが楽しいんだよね~。夢中になる内に、時間を確認すると夜の11時を回ろうとしている。


 「零、まだやるの?」


 「はい!、まだ大丈夫です。」


 またぱっと視線をこちらにくれる。頑張るね~。そして、俺が自分の問題に没頭している、つまりは時間という概念を忘れている。ふと、何かが頭をよぎり、時計に目をやると午前の3時であった。知らぬうちに日付が変わっていた。隣に目をやると、机に突っ伏している零の姿があった、寝息を立てながら。こんな形で寝ては体に悪いと思い、起こさないように気を付けながら、抱きかかえて寝室へ運ぶ。背が高めなのにどうしてこうも軽いのかと度々思う。運んだついでに俺もどっと睡魔が襲ってきたために俺もそのまま意識を失った。



 俺がふと目を覚ますと朝の7時、つまりは4時間後である。深い眠りだったのか疲れはなく寧ろ調子が良い。睡眠時間という観点では些か短いが、このまま起きるとしよう。隣を見ると、普段は空っぽの場所に零が寝ている。また、いつもは俺に抱き着いて寝ているのに今日は俺から離れて小動物のように小さくなって寝ていた。勉強初日から根を詰めすぎたのだろうか。


 「まぁ、このままでいいかな。」


 俺は静かにベットを抜け出し、部屋を抜け出し、階段をおりリビングへ向かう。たまには俺も料理でもと意気込み、冷蔵庫を見る。


 「和食系を零に出すのは気が引けるなぁ~」


 冷蔵庫を見た際に思ったのは、零の作る和食の材料のみということ。まぁ、洋食へ使うことも可能だろう。だが、俺には思いつけない。


 「卵と……、確か、トマトピューレがあったな。野菜類は問題なしと…。うーん、いけるか」


 作るのものは決まったが、作り方の確認のためにタブレットで料理動画を見て確認する。うん、俺の見立てで合っていてよかった。そして、俺は作業を始める。零の口に合うかどうかには少々の不安を抱えて……。


 およそ一時間経過……


 「あれ~、私はなんでベットに……?確か、涼さんのお部屋で勉強を……。も、もしかして涼さん、久々に襲って……」


 すぐに自分の下着などを確認しますが、至って綺麗なままでした。少し期待したのに……。


 「うーん、といか今何時かしら?」


 近くにある時計を確認すると朝の8時を回っていました。あれ……。


 「えーーーー、しかも涼さんいないよーーーー。」


 私はすぐに部屋を飛び出し、階段を駆け下ります。少し、良い香りがすると思うとキッチンのコンロに一つの鍋がありました。中は、ミネストローネでしょうか?


 「でも、なんで涼さんいないの~~。私が遅くまで寝てるから使えない嫁だと思って出て行って……うわぁぁ」


 私、涼さんに捨てられた。じゃあ、この鍋の料理は涼さんの最後の料理……、なんか目から涙が……。



 



「あ、零、起きたんだね、ちょうど良かったよ。あと少しでご飯できるから。」


「えっ、涼さん……涼さーーーん」


俺は零に正面から突撃された……というか泣いてる?。


「これからは寝坊しませんから、家事とかもっと頑張りますから、私を涼さんのお傍に置いてくださいーー。なんでも言う事聞きますからーー。」


「はい?」


そこから色々とあり、零も状況を掴んだようだ。俺は、オムレツを作ろうとしたが、零の起きてからの方が良いと考え、同時進行としていたミネストローネが出来てしまった。主食はパンの方が良いと思ったが、家にないため、近所のパン屋に行き、買ってきた。帰ると、ちょうど零がいたので声を掛けたら、先の通りである。




「涼さん、これ超おいしいです。ご飯派でしたが、こういう朝食も良いですね。」


「うん、ありがとう。」


零が落ち着いたところでオムレツやパンを仕上げて朝食を開始した。零とは全然異なる洋食を絵に描いたような朝食である。


「いや、零が泣いてた時はほんとにどうしたのかと思ったよ。」


「もう忘れてくださいよ~。起きたら涼さんがいなくて焦ってしまったんですよ~。」


「いや、まぁ疲れてたのかよく寝てたからさ~。起こしたらダメだな~って思って……。」


「えーと、私、自分でベットに行ったんですか?」


 「いや、俺が運んだけど」


「えっ、そんな、重くなかったですか?」


「いや、軽かったけど。」


「そんな♡、えーと具体的にどう運んだんですか?」


「おんぶにしようか迷ったけど、起こしたらまずいと思ってお姫様だっこにしたよ。」


「お姫様だっこですか……ありがとうございます。(もう~なんで私

そこでガチ寝してるのよ~。お姫様だっこだよ、しかも涼さんだよ)」


「そういえば、かなり疲れてたみたいだけど大丈夫?」


「はい、もう大丈夫です。(涼さんに教わるのが嬉しくてとか、間近に専属教師みたいな涼さんがいてカッコ良すぎて緊張しちゃうなんて言えないよ~……)」


「うん、今日はもうちょっとゆっくりやろうか。また一緒にさ。」


「はい!。(優しいよ~、テストまで私持つかな~)」




 朝食後のSNSにて(女子)


雅 「零ちゃん、勉強どう?」


零 「涼さんのおかげでかなり進みました。」


雅 「旦那が学年1位で、付きっきりで教えてくれるんでしょ。もう、零ちゃん幸   せ過ぎじゃん!!!」


零 「そんな~、雅さんだって葉山君がいるじゃないですか~」


雅 「うん、だから今日、図書館で勉強デートなの。なに着ようか迷ってるの~」


零 「私たちも昨日しましたよ。雅さんファイトです。」



(男子)


葉山 「なあ、いい図書館知らない?」


俺 「あ、どうした?」


葉山 「今日、雅に勉強教えないといけなくてさ」


俺 「家で良くね?」


葉山 「雅が図書館って聞かないんだよ」


俺 「じゃあ、黎明は?昨日行ったけど結構良かったよ」


葉山 「ありがとう、そこ行く。」





 「涼さん~、私も図書館で勉強デートしたいですーー。」


 「いや、昨日したよ。」


 「今日もしたいですーー。」


 「まぁいいか……どこの図書館?」


 「黎明図書館にしましょう。気に入ってしまいました。」


 「(マジか……)うん、いいよ。じゃあ、準備しようか」


 「はい!」



 この後、図書館であの2人に会い、4人でほぼ遊びながら勉強したのは言うまでもない。俺と葉山は課題が終わっていたが、雅と零は悪戦苦闘であった。まぁ、最終的に終わったのだが……。雅はマジで死にそうな顔してたな。






 





 

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