俺の青春ヒロインは助っ人でした

あまてら

第1話 とある転入生


 「...暇だ」


 そう呟きながら教室の窓の方を見る。本当に暇で仕方がないのだ。

 俺の名は秋月和人(あきづき・かずと)。普通の高校生で、何もやることが無く、趣味も無い。


 「はぁ...バイトでもしよっかな...でも働くのだるいしな」


 自分でも分かっている。俺はニートだと言うことを...でも、やはり働くのは嫌だ。


 「う~ん、やっぱいっか!」


 そんな事を言ってるからいつまでもニートな高校生なのだと自覚はしている。だけど、やはり何事にもやる気にならない...。


 だが、ある日転入してきた少女により、俺の学生生活が一変するのだった...。


 ――――――――


 俺が学校の門の前に着くと、


 ポンポン


 誰かに後から肩を叩かれた。一体誰なのだ?後に振り向くと―


 「なん―」


 プニッ


 指で誰かに頬を突かれた。


 「おはよーヅッキー!」

 「おう、おはよー椎名」


 こいつの名前は椎名優里(しいな・ゆり)。俺とは中学の頃から一緒で、高校生になった今でもクラスが一緒だ。この「ヅッキー」って呼び方は、中学の頃から呼ばれている。もちろん俺の事をそう呼んでるのは椎名だけだが。


 「またヅッキーは遅刻ギリギリだね」

 「別にいいんだよ。遅刻しなけりゃいい話だろ?」


 (朝起きるのだってだるいし...)


 「じゃあとりあえず行こ、ヅッキー!」

 「おう」


 ――――――――


 「おーい、皆席につけよー」


 先生がそう言うと、生徒達はすぐに自分たちの席に座る。


 ざわざわ...


 何が教室がざわついている。何でたろうか?何が珍しい事でもあったのだろうか。まあぼっちの俺からしたらどうでもいいけどな...そう思っていると、


 「知ってるやつもいるだろうが、今日から転入生が来ることになってる」


 ざわざわ...


 教室からは、「男、女?」とか「どんな人なんだろう?」とか聞こえる。そんなに転入生が気になるのかよ...。まあ、転入生なんて毎回来る訳じゃないから仕方ない事か。


 にしても、教室がうるさい...。いくら何でも騒ぎすぎなのではないだろうか?


 (うるさいな...もうちょっと静かにしろよ...)


 すると


 ポンポン


 「ん?」

 「ねぇねぇ、ヅッキー」

 「何だ?」


 俺は今ボーッとしときたいんだよ。だから話しかけるなよ...全く。


 「実は今日来る転入生って、すっごいお金持ちの人なんだって!」

 「おいおい、マジかよ...」


 (まさかこの学校に金持ちが来るとはな...)


 大抵金持ちの学生は調子に乗ったり、イキったりするヤツが多いからな...正直そこらへんが心配だな。


 ガララッ


 教室に入ってきたのは――


 カッカッカッ...


 「「おおおぉ///」」


 そこに現れたのは、......なんとう言うか、すごく美人の人だった。正直この学校に来るべきなのか?と思ってしまう程だ。


 「何だアイツ...」


 (やべっ、思わず口が滑った)


 「えーっと、まずは自己紹介してくれ」


 先生がそう言うと、その美少女は喋り出した。


 「園咲蒼(そのざき・あおい)です。皆さんこれからよろしくお願いします」


 ざわざわ


 「ねぇえねぇヅッキー、あの子めちゃくちゃ美人じゃない?友達になりたいな~」

 「お、おう...」


 うわ...絶対アイツと関わったらろくな目に会いそうにない気がする。


 「それじゃ園咲、お前の席は秋月の隣だ」


 「「...え?」」


 (...え?どういう事だ??)


 なんか一気に俺に視線が向いてる気がするんだが...ってか何で俺の隣なの!?

 いや、マジかよ......


 「秋月君だっけ?よろしく!」

 「あっ、はい...」


 なんだこのお嬢様感は...しかもやりずらいな。


 ――――――――


 そして数日後――


 ――――――――


 「ねぇえぇヅッキー」

 「何だよ」


 「あの園咲蒼って子が、部活を立ち上げたらしいよ!」

 「...は?」


 (えっ、まじかよ...)


 部活を立ち上げたのか?まだ転入して数日しか経ってないぞ...??


 ガララッ


 「おい、秋月はいるか?」


 「はい、俺ならここにいますよ」

 「そうか、なら話は早い、さっさと来い」


 そして俺は職員室に引きずり込まれたのだった..........。


 「お前、数日前に転入してきた園咲が部活を立ち上げたの知ってるか?」

 「ええ、一応。なんの部活なんですか?」

 「それが...」


 ――――――――


 「助っ人部?」

 「ええ、その名の通り、困ってる生徒を手助けする部活だそうよ」


 (なんだそりゃ...)


 人を手助けする部活...?そんなの何が面白いんだか...俺には分からん。


 「それで、俺をここに連れてきた理由はなんですか?」

 「お前さ、部活もバイトもやってないだろ?だからこの”助っ人部”に入れ」


 「................は?何いってるんですか?」

 「いやだから、この部活に入れって言ってんの。あ、拒否権はないわよ?」

 「えぇ...」


 こうして俺は先生によって無理矢理この”助っ人部”に入部することになった。


 ガララッ


 「こんにちはー」


 とりあえず、部室に行ってみるとそこには園咲がいた。多分あいつが部長なのだろう。

 にしても、部員は俺とはアイツだけか...?


 「えっと、あんたが新入部員...って秋月?」

 「あっ、うん」


 (だめだ...やっぱりやりずらい..........)


 「えっと、園咲さん、でしたっけ?」

 「あら、あんたもう私の名前忘れたの?席も隣なのに?」


 (なんか転入当初と喋り方変わってね?)


 「えっと、何かすることはないのか?」


 俺がそう言うと、


 「とりあえず、依頼が無かったら何もする事はないわよ?」

 「え、そんなん部活なの―」


 バァン!!


 「ひっ...」


 (なんだいきなり!?)


 「ねぇ、次そんな事言ったらただじゃすまないわよ...?」

 「..........はい」


 何でこの人そんなに怒ってるの...?正直普通に怖かった.....


 (俺はやはり、この部活には入るべきではなかったのかもしれない..........)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る