第7話武器の検証の日

「さて。今日も頑張るか」


 僕は軽く屈伸をして伸びをすると身体をほぐした。

 目一杯に空気を吸い込み吐き出す。


 そうすると草木の香りが鼻腔をくすぐりなんとも清清しい気分になってくる。


「慣れないベッドだと寝付けないかと思ったけど。高級宿だけあって快適だったな」


 出かける前に笑顔で見送ってくれたおっさんとステラちゃんを思い出す。


「さて。それじゃあ、検証を始めるとしますか」


 接客の為とはいえ誰かに見送られるのが嬉しかったのか、綻んだ頬を叩いて気合を入れ直した。



 ・ ・ ・


 ・ ・


 ・


「まずは、武器の検証から始めよう」


 ここは街から徒歩1時間程の場所にあるだった。

 右手には森があり、左手には小川がせせらぎをならしている。


「とりあえず一通り出してみるか」


 何故、僕がこんな遠くまで歩いてきたのかというと前日に出来なかった検証を行う為だ。


 先日。僕はエクスカリバーで亀を一刀両断にして屠って見せた。

 それは武器そのものの威力が高かったこともあり、実感は全く湧かなかったのだが、あまりにも過ぎたる武器は周囲にトラブルを呼び込む。


 その事に気付いた僕は装備を変更した。

 それと同時に疑問が沸く。


 他の神候補達はどのような装備を手にしてどのように動くのだろうか?


 配られたSPは2500。そのうち武器に使うとすると1000~1500程度と予想がつく。

 そこで、僕は1500までの武器をある程度試しておいて彼らの冒険がどの程度の難易度になるのかを推し量ろうとしているのだ。


「まずはこれからいくか」


 僕が鞘から抜いたのは赤い剣身のロングソードだった。

 その燃えるような赤は凄みを発しており、よほどの素人でなければこれが業物であると理解できるだろう。


 僕は神の瞳を使ってその剣の情報を引き出した。



名称:ファイアブランド

効果:炎を身に纏った剣。斬った際に相手に火炎の追加ダメージと火傷のバッドステータスを与える。

必要SP:1500



「とりあえず、手ごろな獲物はいないか…………」


 僕はきょろきょろと辺りを見回してみると丁度良い具合に遠くからゴブリンが現れた。


「あいつでいいや」


 僕は戦闘態勢に入る。そうするとゴブリンも僕に気付いたのかなにやら叫んでいた。

 きっとゴブリン語で「やんのかこらぁー」とでも言っているんだろう。


「先手必勝っ!」


 僕は地面を蹴るとゴブリンめがけて飛び出した。


「ギョギョッ!?」


 これに驚いたのかゴブリンは後ろに身体を傾ける。丁度、両手をバンザイしているようにのけぞる形だ。


「隙だらけだっ!」


 急激に距離がつまり、僕は最後の一歩を調整するとピッタリ、ファイアブランドの間合いに飛び込む。

 一瞬、僕とゴブリンの目が交差する。


 ゴブリンの目には恐怖が張り付いていた。僕は右腕を一線するとゴブリンを胴体から真っ二つに切り裂いた。


「ふぅ。緊張したぁ」


 ゴブリンが倒れて、光なって消え去る。

 そしてインベントリには――。


【魔石の欠片】1


 今回はどうやら肉は残らなかったみたいだ。

 まあ、ゴブリンの肉とか誰が食べるのって話しだよね。


「一撃だったけど、今回は感触があったな」


 思ったより抵抗が無かったのは僕自身がレベルアップしているからだろうか。

 それを除いたとしても流石の切れ味である。


 もし仮に、他の神候補がこれを使ったとしたら恐らく序盤は敵無しで間違いない。


「うーん。属性武器との相性が良かったのかも知れないな」


 念のために考えておく。今回使ったのはファイアブランド。火属性を持つ剣である。

 ゴブリンは森のモンスター。森に対して火というのはいかにも相性が良さそうである。


「よし。次は属性無しの武器にしてみよう」


 なので、僕は武器の種類を変えて再トライをする事にした。



 ・ ・ ・


 ・ ・


 ・


「いたいた。やっと見つけた」


 散策すること数十分。最初はすぐゴブリンに会えたのだが、それ以降中々見かけられなかった。

 ようやく見つけたゴブリンを僕は嬉しそうに見つめてしまった。


「さて、次なる武器は…………」



名称:パルチザン

効果:長槍。攻撃力補正+30

必要SP:1200


 今度はリーチが長いので注意しなければならない。


「ギョオオオオオっ!」


 棍棒にウッドシールドを構えたゴブリンが僕を威嚇してくる。

 盾で捌いて殴りかかるつもりだろう。


 僕は両手で槍を持つと半身をずらして構えた。こうすることにより相手に対して攻撃できる面積を少なくする事が出来る上、槍の間合いは長いのでリーチの差を活かすことが出来る。


「ギョルルルル」


 突如、ゴブリンは奇声をあげて襲い掛かってきた。

 棍棒を振り上げて襲い掛かるゴブリン。


「隙だらけじゃん」


 僕はその一撃を余裕を持って横にかわす。

 そして再度距離を取った。


「何処を突いても死にそうだけど。ちょっとは経験が欲しいからね」


 そういうと僕はゴブリンが構える盾めがけて槍を突き出した。


「ギャアアアアアア!?」


 次の瞬間。ゴブリンの悲鳴が辺りに響き渡った。盾を貫いてゴブリンの手に刺さったからだ。


「ふむ。これはもう威力見るまでもないな」


 ウッドシールドとはいえ、大した力を入れていないにもかかわらず貫いたのだ。恐らく本気だったら今の一撃で倒せていたはず。


「次の獲物探すの面倒だから他の武器にしてみるか」


 僕がパルチザンをインベントリに収納している間。ゴブリンは僕から逃げ出した。

 野生の本能なのか? どうやっても適わない相手に対して逃げる選択をした事は褒めてやる。


「でもね。相手が悪かったね」


 僕の手には既に武器が握られている。



名称:シルフィード

効果:風の加護を受けた弓。放たれた矢は風を纏い敵を貫く。命中補正+20

必要SP:1600


 僕は矢筒から一本矢を抜くとそれを構えた。


「一応。言っておくけど、僕はアーチェリー全国大会で参加者48人の中で48位……………………になった友達が居る」


 特にその友達にアーチェリーを教わったわけではない。だが、今の僕なら逃げるゴブリンの背中なんて簡単に射抜けるだろう。


「ウインドショット!」


 掛け声と共に手から矢が放たれる。掛け声は特に意味は無いけど無言で放つのってなんと無く嫌だったんだ。


 「ヒュッ」風斬り音と共に矢がすすみ数百メートルぐらい先まで逃げたゴブリンの胴体を貫いた。


 凄いな。この武器。もしオリンピックとかに持っていけたら優勝間違いなしだ。


 僕は武器の性能を実感すると共に、SP1500程度の武器が序盤で必殺になりえるのを知った。


 次は防具の検証かな?

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る