第4話 人魚族の神秘

「湖に塩ぶち込むけど許してにゃん♪」


「だめに決まっているでしょう」


 冷静に拒否された。まぁ分かってはいたけどやはりだめか。どうやら目の前の人魚さんにはぶりっ娘小悪魔フェイスは通じないらしい。必殺技の上目遣いなんて人間の男がみたらイチコロできる自信があったのに。まぁ悪魔のイチコロは文字通り昇天させる事だけど。


「突然来て住居を荒らすというのは酷すぎるのでは?」


「ごもっともです」


「我々人魚にも納得のいく説明を頂きたいものです」


 このイケメン人魚さんめ。水中から顔を突き出しこちらに優しく諭すように言ってくる。イケメンだと困った表情でも様になるのだからほんとずるいと思う。しかし理性的な人が応対してくれて助かった。その方が話もしやすい。


 ここで諸兄の方々には悲しいお知らせをしよう。なんと人魚族の男女比は驚きの8:2なのである。女性型の人魚は本当に数が少ないしなにより表に出てくる事を嫌うのでめったに見れない。人魚と聞くとヒューマンの男性の大半が絶世の美女が貝殻の下着を身に着け微笑みかけるという何とも都合がいい妄想を繰り広げるらしいが現実は男だらけのムキムキマッチョな一族なのである。どっちも美形ではあるけど。


 海の中はサメやら魔物やら原始時代さながらの弱肉強食な世界なのだからそれも当然だろう。上半身が人間に近いという特徴を生かして武器を駆使する事で外敵から身を守り狩りをする。一方で女は引きこもり子孫を増やす、というのが大昔彼らのご先祖様が選択した進化の系譜らしい。


 まぁ要は女性は一度にたくさんの数の卵を産むし、一人のメスに卵を産ませてそれを複数のオスで守ったほうが効率良いよねって事だ。


 あれ?これもしかしなくても逆ハーレムじゃない?

 羨ましいんですけど男性側は納得してるのだろうか。他人の雄の子供かもしれないのに一生懸命守れるのは純粋にすごいと思うけど。


 いやそれにしても本当に素晴らしい。目の前の男性の逞しい大胸筋はプロレスラー顔負けな程発達している。はちきれんばかりに膨らんだ上腕二頭筋もべネ(グッド)だ。日夜重たい武器を抵抗力がマシマシの水中で振り回しているのだ。そりゃあもう毎日が筋トレデーなのだろう。昨今ではやけに女々しい人間やらほんの少しの筋肉を細マッチョとか抜かしている男がいるらしいがそいつらに目の前の筋肉をぶつけてやりたい。もうすんごいぞ、雄のオーラ半端ないぞ

 筋肉の魅力と言えばやはり下半身も捨てがたいのだが惜しい事に人魚は下半身が魚なのだ。けれどその代わりに腹筋がもうやんばいの。バキバキに割れたそれは重厚な戦車を彷彿とさせる。一切の無駄なぜい肉が削ぎ落され筋肉本来の姿がありありと映し出されたそれは獣の野性味を感じさせゾクゾクとした震えが…


 そんな人魚族の神秘(都合のいい妄想)について思考しつつポーカーフェイスを保つ。筋肉(私の個人的趣向)について長々と語ってもいいのだが今は仕事が優先だ。とりあえず以前から考えていた計画の一部のお手伝いをお願いしよう。


 私の話をうなずきつつ皆に掛け合ってみますと伝える彼。なんとか了承を得られた。デパートで買った高級菓子をお土産として渡し、族長にどうぞよろしくと伝え本日二度目の目的地へと向かう



さぁ仕方ない

第二プランへ移行しよう

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る