前のエピソード――4#クジャクを追って

　豪雨の中、向う岸に立たずむクジャクのジャニスは、萎んだゴム風船の吹き口を嘴にくわえると、息を思いっきり吸い込み・・・

　ぷぅ～～～～～～～～～～！！

　と、ゴム風船息を入れてどんどんどんどん膨らませ始めた。

　ぷぅ～～～～～～～～～～！！

　「何で、あのクジャクさん。ゴム風船なんか持ってるの？！」

　「っていうか、あの風船・・・綺麗な模様ね。青と緑と白が畝ってるような、波うってるような・・・」

　「あれだ！！あのゴム風船を、このクジャクがハクチョウの女王様から盗み出したんだ！！」

　「ええっ？！王様？！ホント？！」

　鳥達は、ハクチョウの王様の言葉に思わず絶句した。

　ぷぅ～～～～～～～～～～！！

　「っつーか、あの風船・・・大きすぎない？！」

　「クジャクさんの身体の倍以上膨らんでるような・・・」

　「割れたらやばいぜ？！」

　「しかも、女王様から盗み出した風船だよ？！割ったら・・・」

　鳥達が、いつパンクするから解らない位膨らんだ風船に翼を頭を抱えて青ざめているのを尻目に、今度は興奮したのかクジャクのジャニスは自慢の尾羽をバッー！！と拡げて、更に更に息を吹きこんで、向う岸から姿が隠れる位に大きくなった風船を膨らませた。

　ぷぅ～～～～～～～～～～！！

　「よぉーーーーし！！俺も！！」

　ハクチョウの王様のフリードも、羽毛の奥から翼で白い萎んだゴム風船を取り出して、嘴にくわえて息を深く深く吸い込むと、

　ぷぅ～～～～～～～～～～！！

　と、頬っぺたを孕ませて白いゴム風船を大きく大きく大きく大きく膨らませた。

　ぷぅ～～～～～～～～～～！！

　「さ、さすが王様！！みるみるうちに王様の身体の倍以上の大きさに風船を膨らませちゃった！！」

　「アヒルのピッピちゃん！！目をキラキラさせて・・・この風船がダブルで割れたら！！」

　ぷぅ～～～～～～～～～～！！

　豪雨が、はち切れる位に膨らんだ2つのゴム風船の表面にパラパラパラパラパラパラと音を立てて、雫となって滴っていた。

　「うわ～～～～～～～～どちらも限界だぁぁぁーーーーーー！！」

　ぼんっ。

　その時、ハクチョウの王様の膨らませている風船に振動が起きた。

　「よっこらしょ。よっこらしょ。よっこらしょ。よっこらしょ。」

　ぶおっ！！

　「おーい！！そこに居るのは、ハクチョウの王様かーい！！」

　向こう岸のクジャクは巨大に膨らんだ、ピーコック模様の風船の吹き口を翼で押さえて持ち上げて叫んだ。

　「おーい！！クジャクさん！！そう言うことね？！」

　ハクチョウの王様のフリードも、今さっきからでっかく膨らませた白い風船を、同じように吹き口を翼で押さえて持ち上げた。

　「な、何？！2羽は今から何するんだ？！」

　他の鳥達は、羽毛に滴る雨水をふるい落す気もなく興味深くクジャクとハクチョウの王様の掲げる巨大な風船を見上げていた。

　「いっせーのーー！！」

　「せーーーっ！！」

　ぷしゅ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～！！

　ぶおおぉぉぉぉぉぉ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～！！！！！！

　しゅるしゅるしゅるしゅるしゅるしゅるしゅるしゅるしゅる・・・・・・！！

　ぷしゅ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～！！

　ぶおおぉぉぉぉぉぉ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～！！！！！！

　しゅるしゅるしゅるしゅるしゅるしゅるしゅるしゅるしゅる・・・・・・！！

　ハクチョウの膨らませた、巨大な白い風船。

　クジャクの膨らませた、巨大なピーコック模様の風船。

　2つの巨大なゴム風船は、吹き口から勢いよく2羽の吐息を吹き出して、ロケットのように雨が降りすさぶ上空を吹っ飛び、やがて萎んで其々の翼の上に落着した。

　すると・・・

　「空を見ろよ！！アヒルのピッピ！！」

　「うわーーーー！！は、晴れてる！！」

　「不思議だぁーーー！！数分前には大翔は土砂降りだったのに・・・！！」

　鳥達とクジャクの間を勢いよく激しく流れていた川は、やがて小河になり、鳥達はハクチョウの王様を先頭に、萎んだピーコック模様の風船を羽毛の奥に仕舞い込むクジャクのジャニスの前にやって来た。

　「俺とのダブル魔術！！俺との息のあったセッション魔術！！恐れ入ったよ。

　此処まで上達してたとは！！」

　「王様！！ごめんなさい！！

　女王様の風船を勝手に持ち出して、このような魔術に使った事への無礼を心から謝ります！！

　すいません！！本当にすいません！！」

　「クジャクさん・・・」

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