3#招かざるクジャク

 しくしく・・・


 しくしく・・・


 「フラミンゴのショーよ・・・あんたは、故郷へ帰ったアフリカで・・・嫌われて袋叩きにされ・・・大事な羽根を折られて・・・仲間に追放されて・・・挙げ句にライオンに喰われるとは・・・本当に故郷に帰って良かったのか・・・?」


 「でも、この国に居ついたなら・・・ただの外来種になってそれこそ、厄介者になってたよ・・・?」


 「フラミンゴのショーよ・・・お前の鳥生はいったい何だったんだ~!!」


 コブハクチョウのチエミとユジロウ、そして今は立派に成長したフッド。


 コハクチョウのラン、スウ、ミキ。


 タンチョウのリサ。


 そして、オオワシのリック。


 慰問に集まった死んだフラミンゴのショーと旅をした仲間達は皆、首筋に割れた黒い風船の切れ端を巻き付けていた。


 「思い出すねえ・・・初めてこの湖へやって来た時は、みーんなで飛んでいく青い風船を追いかけて、導かれるように・・・」


 コブハクチョウのユジロウは、ポツポツと小雨が降りしきる鉛色の空を見上げて感慨深げに言った。


 「そうね思い出すわねえフッド。あの時、ここの湖の畔で女王様達と一緒に『愛の仲間達の儀式』で、の思い思いに風船を膨らませ割りした時に、風船膨らませてる物凄い形相だったわねほっぺたフッド・・・ぷぷっ!」


 「おい!チエミ!!この席でそんな事を言うのは・・・!!」


 含み笑をする妻コブハクチョウのチエミに、夫コブハクチョウのユジロウは慌てて赤面した。



 ばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさ・・・


 ばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさ・・・


 「ハクチョウさん達!タンチョウさん!オオワシさん!ちーす!!」


 「だいぶ遅くなりましたぁ!!」


 そこに、ハシボソガラスのカーキチとカースケもやって来た。


 「いたずらカラスさん達、」


 「やっぱ、来たんだ。」


 他の鳥達は、


 「呆れた態度をとるなよ。俺らだって、皆と一緒に居たいんだよ。」


 「俺らも同じく、死んだフラミンゴのショーと同行したんだからさあ。

 多目に見てよ。」



 ざっ、ざっ、ざっ、ざっ、ざっ、ざっ、ざっ、ざっ、


 「こーーーーーっ!!」



 「あ、」


 「ああ、」


 「白鳥の女王様!!」



 オオハクチョウの女王様は、割れた巨大風船の破片を喪服のように羽織って、ゆっくりゆっくりと皆の前にやってきた。



 「おお・・・」


 「神々しい・・・」


 「女王様のバックに、クジャクの羽根が拡がってるよ・・・!!」


 「派手やかだ・・・」


 「クジャクの羽根とは・・・喪服?」



 さすがのハクチョウの女王様は、ある異変に気付いた。


 「あんた!!なにやってるの!!何のつもりで此処にやって来たの?!」


 「ギクッ!!」


 ハクチョウの女王様に怒りの形相で後ろを振り向かれたクジャクのジャニスは、開いていた尾羽を慌てて閉じて、身体を硬直させた。 


 「す、すいません!!で・・・出来心で・・・」


 クジャクのジャニスは、おどろおどろした口調でズンズンと詰め寄ってくる女王様に言い訳した。


 「どの面下げてまた湖に戻ってきたの?!2度と来るな!!と言ったわよね?!

 学習力無いの?

 とっとと帰れ!!あんたの顔なんか見たくもないわ!!」


 涙目のクジャクのジャニスに、ズケズケと罵倒しまくるハクチョウの女王様に、ハクチョウの『王様』のフリードが羽交締めしてきた。


 「女王様!!女王様!!気を確かに!!落ち着いて!!」


 「王様!!あんた!!離してよ!!こんな辱しめの無い奴なんて!!1発噛まさないと解らないらしいよね!!」


 「1発噛まさないとって・・・女王様らしくない!!」


 

 「乱心の女王様!!こりゃレアだぜ!!」


 「カラスのカーキチ!!口を慎め!!」


 バキッ!!


 「叩いたね!!父ちゃんカラスにも叩かれた事無いのに!!」


 「叩いちゃ悪いか?!この・・・!!」


 「ユジロウさん!やめて!」


 激昂するコブハクチョウのユジロウをチエミが咎めた。



 ・・・・・・




 「ごめんなさぁぁぁーーーーーーい!!」

 


 だいぶ取り乱したクジャクのジャニスは、泣き喚きながら、湖の鬱蒼とした樹海の奥へ奥へと飛んで逃げていってしまった。


 

 

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