第23話 迷路

 二人が次に向かったアトラクションは、巨大迷路だった。町の半分を使った本格的なもので、これだけ大きな迷路はトラマルでもはじめてだった。



「これは、下手したら本気で迷いそうだな」


「ぷっ。こんな子供だましの迷路で、本気で迷うはずないじゃない。〈影の一族〉とあろうものが、情けないこと言わないでよ。笑えるでしょう」


「今の一言で、今日一番の殺意がお前に湧いたぞ」


「はいはい。それじゃあ、情けない〈影の一族〉さんのために、私が先導してあげますよー」


「俺は、もうお前が迷う未来しか見えないんだが……」


「まっさかー」



 数十分後……。



「ま、迷ったわ……」


「知ってた」



 ここまで予想通りだと、逆に清々しかった。



「お、お、お、落ち着きなさいよ」


「お前が落ち着け」


「こういうときは、手を壁につけて進めば、いつかは出口にたどり着くものなのよ!」


「ああ、よく聞くな。やってみるか?」


「もちろん!」



 数十分後……。



「なぜ同じ場所に戻ってくるのよ……」


「すさまじいほどの馬鹿っぷりだな」



 迷路で手をついた壁が独立した島の壁の場合、当然ながらクルクル回るだけで出口には一生つくことは出来ない。壁に手をつくのなら、外側の壁に手をつかなければならなかったのだ。



「そろそろ暗くなってきたな。このままお前に任せていたら、いつまで経っても出口に着かないだろうし……」


「何よ。あんたならすぐにでも出口にいけるっていうの?」


「出口は無理だな。さすがにこの迷路は広すぎる」


「ほら、みなさい。あんただって、私と同じなのよ」


「しょうがない。俺がお前とは違うということを、見せてやるとするか」



 トラマルはそういうと、超人的なジャンプ力で迷路の塀に乗ってしまった。確かに、これならば出口を見つけなくても外には出ることが出来る。



「ず、ずるい! 私も連れて行きなさいよ!」


「お前は自力で脱出するんだろう?」


「誰もそんなこと言っていないわよ! 私も連れて行きなさい。そうしないと……」


「そうしないと……?」


「な、泣くわよ」


「子供か?」



 結局トラマルはリアを回収して迷路を脱出した。これでもスタンプはもらえたので、もしかしたらこれが一番多い迷路の攻略方法なのかもしれない。そんなことを思いつつ、トラマルとリアは次のアトラクションへと向かうのだった。

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