3.『浦戸さんのおつまみ』について(雑な登場人物補足等)

サトミ:

 本作主人公。自分のことを邪悪だと自覚していないタイプの「邪悪」。浦戸さんと「一緒になる」計画を実行するに当たり、なんか邪魔になるかも、ぐらいの動機で躊躇なくユキちゃんさんの後頭部に三点バーストで金槌を振り下ろせる程度にはサイコ。

 その後、望みを叶えて浦戸さんに無事カラッカラにされたが、やはり浦戸さんには「マッズイ」と評される。

 余談ですがサトミが、ユキちゃんさんのことを「なんか邪魔になるかも、とふわっと思った」という描写を本文中に入れ忘れたのは痛恨のミスですね。まあ、今のままでも、え、なんでサラッとユキちゃんさん殺されてるの? え、なにそれこわい、みたいな効果は出てるっぽいので良し悪しかもしれないんですが、その程度の理由で人をあっさり殺せる、という主人公の人物描写として必要だったかなー、とか(ただでさえキャラうっすいし)。あと、浦戸さんとユキちゃんさんが侃侃諤諤やってるながらも親しげなのを見て、もしかしてふたり、付き合ってる?→いや、付き合ってるんだ、そうに違いない→消さなきゃ、と思った、ぐらいまで描写しちゃうとか。ただこれだと作品の質感的にいやなウェットさが出ちゃう気もするので、やっぱり、なんか邪魔になるかも、ぐらいのゆるふわ動機で正解なんじゃないかな? なんじゃない?(ブン投げ)


佐藤さん:

 見た目は爽やかなイケメン系でバリバリ仕事もこなせそうな壮年男性だが、一目見て、あっ、ちょっとかわいいかも、ぐらいの感情からサトミのことをその鋼のメンタルをへし折る勢いでストーキングし尽くす程度にはサイコ。

 当初はサトミにはもっとベタベタするし、絡んできた浦戸さんにも最初から警戒心MAXで対応する描写にしていたのですが、逆にすごいフラットな態度でフツーに恋人として接してくる自分では全然好意を抱いていない年上の男性(コミュ力高くて正体不明の輩にも物腰穏やかに対応して自然と場を治めてしまう)、という感じのほうが逆に怖いんじゃないか、と思って今の按配になりました。

 なお、超絶高いコミュ力から謎の伝手を持っており、サトミが重度の統合失調症患者であるという診断付きの精神障害者保健福祉手帳を取得しており、警察沙汰になったときに警官たちをスムーズに追い返せたのもそれがあったから、という描写も入れようかと思ったのですがそういうパートを入れ始めると分量越えそうだったのでカットしました。すいませんウソです。八割めんどくさくなったからだけです。

 この後は丁寧な下処理を経て塩漬けにされ、浦戸さんのおつまみ(生ハム原木リザーブド二本目)として長く提供されることになる。ナムサン。


ユキちゃんさん:

 童顔で小柄なせいでオフの日に他のお店に入ろうとすると免許証の提示を求められる程度にはめんこい容姿をしているが、浦戸さんやサトミのようなヤベー奴らを自然に引き寄せてしまう因果なバーを細腕一本で切り盛りする立派なバーテンダーさんであり、浦戸さんの犠牲者を生ハム風に加工して本人に食わせて始末させる程度にはサイコ。

 実際のところ浦戸さんみたいなのが居付いている店のマスターだけあって自身もノスフェラトゥ的ななんかなので、本編終了から一時間経過後ぐらいには「いったたたたたた……」とか言いながら平気で立ち上がり、店内にまたカラッカラでシナッシナの死体が増えてることについて浦戸さんにプリプリ文句を言いながら片づけをし、ふつうに店を営業する。

 なお、店名は「Pandemonium」(パンデモニウム)=「万魔殿」である。当初はFloraとかAromaとかもっとファンシーなアレだったが、いつからか浦戸さんみたいなのが次第に居付くようになり、あえなく改称となった。本人もすでに開き直っているとこがある。


浦戸さん:

 吸血鬼的ななんか。お肌の触れ合い的ななんかがあるとオートで相手に即死ダメ級のドレインをかけてしまうという特異体質のため、日頃からなるべく肌の露出を控えた服装を徹底しているが、なにか厄介そうなことがあると「ま、吸っちゃえばいいか」(相手は死ぬ)とティッシュ紙並みの軽さで考えているフシがある程度にはサイコ。

 こうした人種(?)の存在は公表はされていないが政府にも認知されており、浦戸さんも毎月厚労省ナントカ局的ななんかから輸血用血液の提供を受けているが、本人曰く「えー、だってマッズイんだもんアレ!」「だって校庭の鉄棒で逆上がりしたあとの手のひら舐めたときの味するじゃん!」「あれ毎日はマジ無理だって!」らしく、住居の冷蔵庫は常にそのパックで満杯である。ただし、雑に処理するといろいろ差し障りがあることは一応本人も理解しているらしく、本当に保管場所がなくなるとそのマズさと格闘しながら一気飲みして片づけている。というか必ずしも人間の血液を摂取せずとも生存自体はできるらしく、それでも赤いものを飲むと気分がアガるのか、普段はユキちゃんさんの店のカウンターの端っこの席でレッドアイ(※ビールをトマトジュースで割るという、定番ではあるが何故そんな発想に到ったのかわりと謎なカクテルの(無数にあるうちの)ひとつ。飲み慣れるとわりとおいしい。おいしい? うん、おいしいんじゃないかな? 個人的には提供する前にビールの泡の部分の上に黒胡椒を一振りしてから出してくれるお店は信頼できるお店だと思っています)を啜りながら管を巻いている。

 この後、サトミをご希望どおりサクッと始末した後、ユキちゃんさんにクドクドお小言を言われながらレッドアイを三杯お代わりして帰る。

 なお、名前の由来は世界一有名であろう吸血鬼、ドラキュラ――のモデルになったと言われる実在の歴史上の人物、“串刺し公”ヴラド3世から。じつに安直ですね。作者の人は反省してください。


《書いた経緯》

 いつごろ思いついたのかははっきり覚えてないのですが、川系の講評を拝読してるといつも一定数「吸血鬼枠」というか吸血鬼を扱った作品が投稿されていて、それが結構闇の評議員の方々の心にブッ刺さったりしているのを観測していて、うおおおおおおおおおオレもブッ刺してえええええええええ!!!とよこしまな考えを抱いたのが発端となります。

 でもわたしに正統派の、ゴシックの、クラッシックの、エレガンスの、ビザールの、吸血鬼など造形できるわけなどもなく、考えついたのが「室内なのに真っ黒いコートを着込んでバーの闇に紛れながらカウンターの端っこの席でレッドアイをがぶ飲みして管巻いてる似非吸血鬼」という浦戸さんのイメージで、あと、どうせ変な吸血鬼なのでふつうに吸血するんではつまらないというわけで、浦戸さんと被害者の肌が触れ合うと、被害者の穴という穴から血液が漏出して中空に球を形成し、それを浦戸さんが飲み込む、という吸血の絵面が頭に浮かび、さてそれを読者の方に提示するにはどうすべえ、ということで、まずはだれかしら吸われるヤツ(悪役)がいるな、ということでこれが佐藤さんですね。そして悪役がいるからにはその存在に悩まされている被害者がいる、というわけでこれが主人公。それでもってわたしはバーという空間が好きなので、手クセでそれを舞台背景としたら当然バーテンダーさんがいる。

 というわけでそれらを、なんかこう、いい感じに、ガッ、と配置して、くっつけ合わせたのが本作となります。ただ、浦戸さんが悪役を成敗したところまでではオチとして弱かった(というか最後のアレがないとそもそも【たったひとつの望み】というレギュを満たせてなかったので、アレでいいんだ、うん!)ので、結果的に主人公がナチュラルサイコキラーとなり、ユキちゃんさんが頭をカチ割られることになりました。

 9回裏までどうなるかわからない、それが小説。いやー、小説ってほんと不思議でおもしろいものですね。

 それでは今回はここまで! また機会があればお会いしましょう、アリーヴェデルチ!

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