夢卵荘~寮母(仮)始めました~

みおう

1日目

「ほんっとにアイツにぴったりだよなぁ

"空っぽの空ちゃん"」


昔から定着している名前いじりは、自分でもぴったりだ、と納得してしまうほどしっくりくる。


運動も勉強も平均かちょい下。

友人はおろか、同級生にも敬語なコミュ症。

そんな、大した能力も無く、人付き合いもまともに出来ない人間が3年も社会人生活をやっていけているのは、図太い性格と趣味のために稼ぐをモットーにしているからだと思う。


家に帰れば、漫画に小説、アニメやゲームの世界にどっぷり浸り、翌日の鋭気を養う。

リアルの人間関係なんていらない。

お金さえ稼げればそれでいいのだ。


...でも


「アイツ辞めちまわねーかな。一緒に働くの苦痛なんだけど」

「わかるーw」

「仕事は特別出来るわけでもねぇ、仲間意識も向上心も無い。居るだけお金の無駄じゃん」


...もし


「せめて自分から辞めますーって言ってくれたら楽なのによー」


もしも、


こんな胸くそ悪い職場をやめて、ずーっと家に居れたら、


「…いいのになぁ」


「あら?」


しまった。お客のいる前で独り言なんて、


「あなた...」


最悪だ、絶対口から出てた。


「ひとつ聞いてもいいかしら?」


休憩室から聞こえる従業員達の会話に気を取られて、後にいた客に気付かずクズニート発言...

これは絶対クレームだ...


「はい、何でしょうかお客様」


開き直って正面から受け止めよう。

悪くなるのはどうせこのこのお店の評価。

私個人には関係ない。


「家にずっと居たいなら、家に居ながら仕事が出来るのって理想じゃない?」


遠回しの嫌味か?

ねちっこい客だな。


「はは、そうですね。」


ここは無難に話を合わせてやり過ごそう。


「なら...

あなた、アパートの管理人してみない?」


「は?」

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