第七話[生きてておめでとうパーティ]
ハート形のベッドで女の子たちが騒ぐ。ピンクやスカイブルーのふわふわの部屋着。流しっぱなしのアダルトビデオをたまに見てはライトな悲鳴をあげてみたり。テーブルの上には甘ったるいケーキがあって、それぞれ勝手に切って食べている。カラフルなお酒はぜんぶ安っぽい味がした。
「ねぇハル」
ユミカのおっぱいがあたしの薄い胸に当たる。ユミカの肌は、くだものみたいに爽やかで甘い匂いがする。
「なぁにユミカ」
「指、からめていい?」
「いいよ」
あったかくて、ちょっと湿ってて、やわらかくて。触っていると安心する。それはユミカも一緒なのかな。ときどきこうやってくっついてくる。
「ハル、ホントに死んじゃうの。寂しいんだけど」
「いいじゃん、今は生きてるんだもん」
「うん。おめでと。生きてておめでと。でもやっぱ、置いてかれたくないなぁ」
「じゃあ一緒に死んじゃう?」
「やだ。冗談きついよ。生きてたいって言ってたじゃん」
「まぁね」
だから毎月、生きてる記念にパーティをする。親には言えない秘密のパーティ。ばれたらどうなるかなんて知らないし、泣かれるか怒られるか複雑な顔で黙られるかわかんない。だからって悪いことをしているとも思わない。だって誕生日を祝うのだって、また一年過ぎましたっていう記念でしょ? 長生きが当たり前になって忘れてしまって形だけになっただけで。
「そういえばカレとは復縁したの?」
「あいつ意気地なしなんだもん。考えさせてとか中途ハンパな返事された」
「ハルはなんでそいつのこと好きなの」
「なんでって言われても。あたしだって、もっとイケメンで優しい人にしたらいいじゃんってたまに思うけど」
「ま、そーだよね。恋だし」
「うん。まだ恋だ」
ショッキングピンクのグミをつまむ。
「具合悪そうだったし、助けたいって思うんだけど。友達引きずり込んで部屋籠ってるし、あたしなんて必要ない気はするし」
「押しかけちゃえばいいのに」
「本気で嫌がってるみたいなのに?」
「ハルがやってみたいことは全部やったらいいじゃん。どうせどっちも死んじゃうんでしょ」
「いじわる」
「わたしだって、別に病気じゃないけどいつ死んじゃうかわかんないって思うから好きなことするもん。もっとはっきりわかってるはずのハルがなんでそうしないのかわかんない」
「失敗するのが嫌」
「意外と臆病なんだね」
ユミカがハグをしてくれる。とろけちゃいそうに柔らかくて甘い気分。幸せだよ、ちゃんと。パパやママみたいな立派な大人は納得してくれないんだろうけど。
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