第2話 ファンタジー・オンライン



 僕の名前は、ニルバ・バニル。

 このファンタジー・オンラインでは、剣を扱う剣士をしている。


 他のプレイヤーは、このゲームをデスゲームにした犯人を推理したり、クリア条件であるラスボスを追ったり、ログアウトする方法がないか探したりしているが、僕にとってはそんな事はどうでも良かった。


 僕は拠点としているプレイヤーホームと、その周辺で悠々自適に気ままに暮らすだけだ。





「お、レアモンスター発見。あれ、良い素材落としてくんだよなー」


 今日も今日とて、現実への帰還を待ち望むことなく、俺はマイペースに生活して、フィールドで狩りをしていた。


 レア素材を落としていくモンスターを発見した俺は、そいつへ足音を殺しながら近づいていく。


 のだが、


 そのモンスターは俺の気配に気づいたのか、慌てた様子でその場から離れていってしまう。


「あ、おい! 待て! クソっ、せっかくのレアが」


 悪態をつきながらも、このまま獲物を逃がしてなる者かと思考を巡らせる。


 見失わないようにしながら俺は、逃げ続けるそのモンスターへ向けて剣を振り上げ、手っ取り早く足を止める為に投擲姿勢に入ろうとした。


 ……のだが、その造作を妨げるようにどこかから少女の悲鳴が聞こえて来た。


「きゃぁぁぁ――っ!」

「いきなり何?」


 声に気を取られてしまえば、逃走中のモンスターにとっては絶好のチャンス。


 距離はみるみる開いていって、あっという間に彼方へ行ってしまう。


「誰だか知らないけど、僕が手に入れるはずだったレア素材の責任取ってもらわないとさ」


 気が乗らないまでも、せめて文句をぶつけないと気が済まないと思い、悲鳴が聞こえて来た方へと向かう事にした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る