第11話「拝啓、思考中にはご注意を。」

 家に出た時の太陽の眩しい明かりは、今はなくなっている。いや、木によって遮られているっていうのが正しいだろうか。

 やはり家で大人しく待っていたほうが良かっただろうか。後々になって後悔してしまう。

 「ふぅにゃー。ふぅにゃー」と猫みたいな動物同士が喧嘩している。それに……、

「くそっ、また足を噛まれた。くぅ痒い~」

 今ので何匹目だろうか、僕の太ももを刺した蚊の数は。かゆみ止めがあるのならば、ぜひ欲しい、土下座ならいくらでもしてやるから。

「アミュさんは居ないし、蚊には噛まれるし、どこかで猫らしき動物が喧嘩してるし、行くんじゃなかったかな」

 ため息が知らぬ間に出てしまう。毎度、毎度なんでこんな目に合わないといけないのだ。僕は自由を求めてこの世界に来たのだぞ。今はアミュさんのペットだけど。

 ただ、森が太陽を遮ってくれているおかげで、自然の風が気持ちいい。ああ、懐かしい感覚、前世で確か、おばあちゃんの家に行った際に吹いてた風だ。以前の記憶がスッと頭の中でよぎった。ただ、それは一瞬だったわけで、森を歩いているうちに、アミュさんの身体の話に次第となっていった。なぜ、そうなっていったのだろうか。僕でも分からん。ただ、一人では暇だった、そんなところだろう。現実逃避したかったのだろう。とでも言っておこう。


「ああ、アミュさんってなんで全体的にエロイんだろうな。あのエロっぽい丸みを帯びたケツに、豊潤なおっぱい。そして、全体的に少しお肉が付いている身体。絶対、魔王軍に囚われる騎士だろう。ふぅ、やっぱり守ってやらなくちゃいけない」


 僕はギュッと拳を作り、決意するが、やはり顔がにやけてしまう。そして、すぐに拳を緩めてしまう。


「あの美貌に全体的なエロさ、素晴らしい。芸術だな、僕は人間ならば放っては居ない」

 腕組をしながら、「うんうん」とうなずきながら、歩いていく。

 次第に、蚊が「ぷーん」と近づいてくるのが分かった。蚊が近づいてきた瞬間、僕は、威嚇をした。


「お前らうるさい。今大事なところなんだよ」

 真顔で吠えた、真面目な顔で。僕が今思考している最中に邪魔されるのが一番嫌いなんだ。お前らはなんだ、他人(今はドラゴンなんだけど)を邪魔して楽しいの?そんな鬼畜なの?

 顔が真っ赤になっている事だろう。口から何かが出そうになる。

 すると、蚊達が一斉にいなくなった。なぜだろう。今更ながら、額から汗が出てきた。それにゲップも出そうだ。


「ふー、何とか治まったみたいだ。何か口から熱いものが出そうだった。いや、パンを食べ過ぎたせいだろうか。危ない、食べすぎ注意だな」

 僕はきょろきょろと見まわす、いつの間にか猫みたいな動物の声も聞こえなくなっていた。知らない間に気配が消えていたみたいだ。そしてパサパサとカラスみたいな黒い鳥が一斉に飛び出した。

 僕は首を傾げながら、「うーん」と考える。もしかしたら、凶悪なモンスターが近くに居たのかもしれない。それはやばい、アミュさんの命が危ないかもしれない。

顔が真っ青になっていたのかもしれない。額からぽとりと汗が落ちた。手は手汗で冷たく感じる。

「は、早く、急がないと、アミュさんが危ない」

 鼻をクンクンと匂いながら、アミュの匂いを嗅ぐ。パンの香ばしい匂いがする。アミュさんだ。僕は北の方向に行くことにした。

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