第9章 事業拡大

#46 任命される


 アトゥムスに聖魔剣を作製し、大きな利益を上げることが出来た。そのことを含めてこれまでのことをアダムスに報告をした。


■■■


「そうか……無事に取引を終えることが出来たのだな」


「ええ、素材の為に魔物を狩りに行くときは死ぬかと思いましたけどね」


「だが今回の一件も含めて、ハヤトには感謝しなければいけないな。おかげで聖騎士団と太い繋がりを持つことが出来たよ、ありがとう」


「ちょっ、いきなりなんですか、そんなに畏まられると逆に怖いんですけど……もしかして何か企んでます?」


「まぁ、隠しても仕方ないか。そうだよ君にお願いしたいことがあるんだ」


「何ですか?」


 アダムスが頭を下げてまでお願いをしてくるなんて、大変なお願いである事は間違いないだろう。


「今回の取り引きによって、ラーカス商会は聖騎士団と太い結び付きを得ることが出来ただろ」


「ええ苦労して回復薬を納めた甲斐がありましたよ」


「そしてラーカス商会としても聖都市に支店を開くことになったということは知っているな?」


「はいヒソネが許可申請していましたし、この間に聖騎士団の団長に認可してもらった件ですよね」


「そうだ、そしてその認可を得るためにハヤトには多大な貢献をして貰った」


「まぁ、そうなるんですかね」


「だからこそハヤトは聖騎士団で顔が売れているわけで、そのアドバンテージは活かさなくては勿体無い」


「……」


「だから聖都市に開くお店の店長をやってくれ!」

「嫌です!」


 絶対に大変なことになるのは目に見えている。あくまでも冒険者のサポートをしたいのであって、店を運営したいわけではない。そんなことをしていたら忙殺されてしまう。


「即答か……だがこれは業務命令だ。まぁ補助でヒソネを付けるし、他に必要なことがあれば協力するから頑張ってくれ」


「はあ、分かりましたよやれば良いんでしょやれば。やるからには好きにやらせてもらいますからね」


「ああ、赤字さえ出さなければそれで構わないよ」


「頑張りましょう、ハヤトさん」


「ああヒソネさん、居たのですね」


 後ろから急に話しかけられるも、流石に慣れてきた。


「ヒソネさんはもうこの話をご存知なのですか?」


「ええ先ほど打診されたので。一緒に頑張って、新しい支店を是非とも成功させましょう」


「ああそうだな。ならまずはこれからどうするか話し合おうか」


 許可は降りているが肝心の店をどこに開くかも決めていないし、どんな商品を取り扱っていくのかも決めていない。なので話し合っておかなければいけないことは山ほどある。


■■■


 場所を食堂に移して、相談をする。


「さて、これからどうしましょうか?」


「そうですね。とりあえずエルラーを呼んできますか?」


「うーん、そうしたいけど本業が忙しいみたいだし今回はなるべく巻き込みたくないかな」


 量産型の剣の売れ行きが好調で、それの増産と修復に追われているみたいだ。


「まぁでも協力はしてもらう予定だがな」


「悪い顔してますよ」


 今後のことを考えていると自然と笑みがこぼれていたみたいだ。それを悪い顔とは失敬な。


「そうか……まぁでもこれまでにない目玉商品を作るにはエルラーの協力は必要だからな。店の準備があらかた整ったら協力を煽るつもりだよ」


「そうですね、せっかく聖都市に店を構えるのですから、そこにしかない需要の商品を調査して作り出すのも面白そうですね」


「だろ? でもまぁ兎に角、出店する店を準備しなければいけないし明日にでも聖都市に向かうか」


「そうですね。現地スタッフを調達しないといけないですし、色々とやることがありますからね」



 急に決まったことだが、悠長に時間を掛けている余裕は無い。新商品の噂が広まっている内に店を開くことで宣伝効果が期待できるし、他の商会が真似をしてくる前に市場を押さえておきたい。


 こうして新しい店作りに励むことになったのであった。

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