第5話 ハラスメント四天王 (創作)

 俺たちの特訓は、十日間続いた。


 毎日、魔獣達との戦いにより、剣の、弓の、そして攻撃魔法の威力を上げていく。

 フトシは、残念ながら常に攻撃を受けてしまうのだが、そのおかげでユウの回復魔法のレベルと精度が上がっていく。


 彼は体力だけは高いので、最初から『鎮痛』の魔法を使っておけば多少攻撃を受けても何とか耐えられるようになっていた。


 ……っていうか、ユウに優しく治療してもらうために、わざと攻撃受けているような……。

 それはずるいと思う……俺も、ちょっとだけマネしたけど。


 そんなこんなで、俺たちのステータスは以下のように上がっていた。


 名前:ヒロ

 称号:勇者候補

 戦闘力:1160

 生命力:1200

 魔力: 555


 名前:ミキ

 称号:魔術師

 戦闘力:180

 生命力:450

 魔力: 600


 名前:ユウ

 称号:治癒術師

 戦闘力:200

 生命力:380

 魔力: 560


 名前:シュン

 称号:弓使い

 戦闘力:650

 生命力:700

 魔力 :175


 名前:フトシ

 称号:商人

 戦闘力:4

 生命力:1400

 魔力: 0


「ちょっ……フトシさん、なんで戦闘力下がっているんですか! しかも、生命力、パーティーで最高になっているし!」


 フトシのステータスのいびつさに、俺は思わずつっこんでしまった。


「いやあ、なんでだろうかな。元々、戦闘なんて好きじゃないしね。根が善人なんだ、それがステータスに現れているということなんだろうね」


 ニコニコと笑みを浮かべながらそう話す、課長代理のフトシ。

 元の世界でさんざんいびられていたので、根が善人と言うことなどあり得ない事は分かっているのだが、いけしゃあしゃあとこんな事が言えるところがすごい。


 生命力の強さは、この世界に来てから攻撃を受け続けた事による成長なのか、あるいは、元々打たれ強い(つまり、鈍感)なだけなのか……。


 ともかく、我々はアイザックの館付近の敵程度では相手にならないほど強くなった(ただしフトシ除く)。


「皆の者、よくぞここまで強くなった! もう、このあたりの魔物ではこれ以上の能力向上は望めぬであろう……そして、いよいよ邪鬼王側も動き始めたようじゃ。この国が魔族の侵攻を受け始めておる。そしてすでに、その支配下に陥った村や町も存在しておる」


「邪鬼王の……支配下!?」


 アイザックによる、どこかのRPGっぽい展開の説明に、俺も仲間達も息を飲んだ。


「そうじゃ。人々は、突如現れたその大妖魔達に恐れ、『ハラスメント四天王』と呼んで恐れおののいておる」


「ハラスメント四天王……なんと恐ろしい響きだ……」


 俺はゴクリ、と唾を飲んだ。


「具体的には、『セクハーラ・トウゴウ』、『ヒステリック・モラハーラ』、そして最も恐るべき大妖魔、『パワハーラ・ザイゼン』じゃ!」


 アイザックは目をかっと見開き、


「どうじゃ、名前を聞いただけでも恐ろしかろう!」


 と得意げに話してくる。


「……それで、最後の一人は?」


「はあ?」


「『四天王』だろう? まだ三人しか名前を聞いていない」


「……残りは予備じゃ」


「なんだそりゃ! 三人しかいないのに四天王っておかしいだろうがっ!」


 俺は盛大に突っ込んだ。


「ええい、うるさい! 今から四人出てきていたら、あともう一人出て来たときに困るじゃろうがっ!」


「三人の時点で四天王って言っていることがおかしいんだよっ!」


「勇者候補ともあろう者が、細かい事を気にするでないっ!」


 ……だめだ、この老人、変なところで頑固だ。

 こんな無駄なことで争うのもアレなので、とりあえずアイザックの好きにしてもらうことにした。


 そしてその彼の上級転移魔法、『ルーララ』により、『セクハーラ・トウゴウ』の支配下にあるという、『ショムーブ』の町へと向かった。


 ……そこそこ大きな町なのに、全体的に活気がない。


 もうかなり日が高い時間帯で、天気も良いというのに、人通りは少なく、特に女性の姿を見かけることができない。


 アイザックも、この街の現状は概要しか把握していないということだったので、俺たちはまず情報収集の定番である、酒場へと向かった。

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