その8 暗闇の中へ

 中は真っ暗闇だった。ルートはランタンに明かりを灯した。そこは広間のように広く、所々欠けた、大きな石柱がそびえていた。

 彼らは奥へと進んだ。天井の高さは十メートルほど、部屋の横幅はルートとシーグラムが悠々と通れるくらい広く、廊下のように奥へと道が続いていた。


「だだっ広いわりには、何にものこってないのな」

「ああ、瓦礫ばかりだ。だが、小人には少々不釣り合いではないか?」

「そうだな。床や壁も、ただの石じゃないような」

「床は大理石で作られているようだな。もしかしたら、小人族が住む前に高度な文明を持った人間が住んでいたのかもしれないぞ」

「ズイ族じゃなくて?」

「それは分からないが——。どんな文献にも記されていないことが、起こっていたのかもな」

「俺はとにかく、早くお宝を見つけたいぜ」


 二人は道中で、随所随所に小部屋があるのを見かけた。それぞれ調べてみたが、どこも瓦礫があるばかりで、他には何も無い空き部屋だった。


「なんか、おかしいな」

「うむ、生活の痕跡が全く残っていない。何者かに全て持ち去られたか——」

「シーグ、向こうの方に階段があったんだ。そっちへ行ってみようぜ」


 廊下の突き当たりにある階段は、上と下、それぞれに通じていた。だが、上へは行けなかった。天井や壁が破れて、土と岩がめりこんでおり、それが隙間なく上へ続く道を塞いでいたのだ。下への階段も、多少の崩れはあったが、降りられそうだった。シーグラムが先行して下へ降りた。

 階下への道は長かった。途中、階段が一部崩れ、ルートが通れなくなってしまったため、シーグラムが彼を抱えて下へ降りることとなった。

 下の階は、上よりももっと広い空間が広がっていた。何百人、いや、何千人も入れそうな大広間だった。だが、ここも石柱と瓦礫が残っているばかりで、他には何も残っていなかった。唯一違う点といえば、上の階よりも損傷がひどいということだった。床も壁も、土や岩が剥き出しになっており、瓦礫の量も多かった。


「ここも、瓦礫以外に何もないな」

「ああ」しばらく行くと、床が無くなっていた。途中で、床も壁もパックリ食われてしまったように途切れており、代わりに巨大な穴ができていた。穴の向こう側も、底も全く見えなかった。

「どうする?」

「まぁ、飛んで様子見するのが一番だろう」シーグラムは、再びルートを抱えて飛んだ。穴の底は相変わらず見えなかったが、対岸は確認できた。二人は、一旦そこへ降り立った。そこには、すぐ向こう側に扉が見えた。だがそれは、ドラゴンほどの大きさの生き物が通れそうなサイズではなかった。


「ルート、私にもランタンをくれ。お前はそこの扉から、私は穴にもぐって調べてみる」

「おう、分かった」ルートは、シーグラムの首にランタンをかけてやった。そうして、二手に分かれた。

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