第6話 吾輩は砂利が大好きである


 近所のバイク屋が庭を大改造したらしい。

 調査に乗り出すと早速我輩の目に留まった物。

 それは……なんと素晴らしき和風庭園か!

 汚いバイク屋の親父がこれ程のセンスを持っていようとは只々感嘆するばかり。


 手始めに旧都の枯山水的な眺めを模したように造られた庭先へ。

 手入れされた砂利の上へ堂々と足跡を残し、更には至る場所へと大便をしてやる。

 これが結構手間のかかる作業で、最後辺りは砂をかけずそのままにしておいた。

 想像以上のヘッロヘロになるまで疲れたというなんとも腹立たしい結末に。


 となれば今度は疲労回復の為にと輝くコケで作られた絨毯の上にゴロリ寝ころぶ。

 うーむ、なんだかフィッティング感が今一つ。

 なじませる為、激しく動き回って自分好みに調整。

 これでオッケー。


 

 一時ほど横になれば体力はほぼ回復。

 ならば今度はストレス発散の為、爪研ぎでもしてみようか。

 

 

 庭の横にある専用棚へ丁寧に並べられた小さな器で育てられている様々な木々達。

 大きさの割には相当歳を取っているだろうウネった針葉樹の本体をガーリガリ!

 ところがこの老いぼれときたら表皮がぺリぺリと剥がれるだけの超役立たず。

 イラっとしたから器ごと地面へ蹴り落としてやる。


 するとどうだろう?

 ポンッと音を立てて撒き散る様はまるで地面へと打ち下ろされた花火。

 風流に感化された我輩は少しだけ胸がスッとした。

 序に順序良く並んでいる他のヤツも次々落下、連続花火でドーンドン!

 特に針金でぐるぐる巻きにされた気合いの入っている物を選んで蹴り出した。


 音で気付いたのか、主人であるゴミ虫が颯爽と登場。

 〝モンキーレンチ〟と呼ばれるものを振りかざしての大喜び!

 必要以上に我輩を追いかけてくるので早々その場を切り上げた。

 もしかして幸せを共用しようとでもしていたのだろうか?

 なんかキモイ。


 その際店頭に整然と並んでいるバイクのスタンドなるものに引っかかってしまう。

 予定外の打撲を負ったが無事バイク屋からの脱出に成功。

 

 まったく人気者はつらいな。

 あんなにもしつこく追ってこなくともよいのに。


 同時に後方から複数の何かが倒れる音が聞こえて来るも、我輩には一切関係ない。

 よってガン無視を決め込みそのまま立ち去って行く。


 悠々と店を後にする我輩だったが、なんとなーく一度だけ振り返ると、ゴミ虫親父が地面を叩きながら泣いて喜んでいるのが目に入った。


 

 我輩は今日もバイク屋の手伝い仕事を熟したのである!

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