第11話 気さくな挨拶。

 今日も8時に起きた。


 しかし、始業式のあった昨日とは違い、今日の登校時刻は8時45分。


 またヤンキーに絡まれても大丈夫なように、いつもより少し早めに家を出るための8時起床だ。



 いつも通りに15分間で準備をし、家を出る。


 もちろん、通学中の曲がり角は慎重に曲がることにした。



 今日は何事もなく無事に学校へと着くことができたが、早めに家を出た分、早く着いてしまった。


 特にすることもないので、朝のホームルームまで自分の席で寝ることにした。



 少しだけ眠くなってきた時に、いきなり背中を叩かれ目が覚める。

 振り返るとそこには龍ヶ崎がいた。


「太郎くん、おっはよ~!」


「お、おはよう。」


 昨日少し話をしただけなのに、次の日から普通に挨拶をしてくるなんて、もしかして自分に気があるのではないか。今日からギャルとの恋愛が始まるのではないか。


 そんなことを考えているとギャルがもう1人現れた。



「綺羅、おはよ。」


「あっ、ゆーこ~!おはよ!」


 彼女は『柏木かしわぎ 悠子ゆうこ』。

 龍ヶ崎と仲が良く、少し落ち着いているタイプのギャルだ。



「何してたの?」と、柏木はこちらを一瞥した後に訊ねた。


「太郎くんと挨拶してた!」


「太郎って…、誰?」


「誰って、太郎くんは太郎くんでしょ?」


 2人してこちらを見られても困るし、まず太郎じゃない。


「いや…、太郎じゃないです。」


「そうだよね。たしか…春日?だっけ?」


「あっ、そうなの?!ゆーこ詳しいね!」


「うん。てかなんで太郎なの?」

 一番気になっていたことを柏木が聞いてくれたが、その前に春日でもない。



「いやー、昨日ケンピの散歩中に会ったんだよね~。でも名前わかんなかったから、ケンタロウから犬のケンを抜いて太郎にしてみたんだよ!」


 なんだその理由。


「ふふっ。やっぱり綺羅は面白いね。」


 いや、面白くはないだろ。


「でしょ~?あーしながらいい名前だと思うわ~。」


 そう思っているのはあーしだけだ。



「あ、あの、俺の名前、春日でもなくて…」

 春日井なんだけど。と言おうとした瞬間、教室の入口の方から声がした。


「おーい、綺羅~!何してんの~?」


 それは、違うクラスのギャルが龍ヶ崎達を呼ぶ声だった。



「何もしてないよ~!」


 そう言い、彼女達は廊下の方へと行ってしまった。



 また本当の名前を伝えれなかった。


 春日もとい春日井は朝のホームルームまでふて寝した。

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