此の命、限りあるほどに美しい

澪汰

00.

side→?


とある港街


普段は昼夜を問わず活気付いている場所。

しかしその日は、そんなことが嘘のようにひっそりと静まり返っていた。

パンッ――

静寂に突如響き渡る銃声。それを歯切りに、あちらこちらで銃声が響く。その騒ぎを、少し離れたコンテナの上で表情一つ変えずに、見つめる若い男。不意に男は音もなく地面に降りると、暗闇に紛れてしまう。



side→


『……?』

「……どうしたの、タスク?」

『いや、なんでもない』


 別室で映像越しに現場を見ていたタスクのレーダーモニターに、一瞬何かが映り込むが、すぐに反応が消えてしまった。例え残党だとしても、彼女の実力ならば問題ない。


(まあいいか…………)


 少女が付けている〝超小型特殊カメラ内蔵〟のコンタクトレンズのおかげで、タイムラグもなく状況を把握することが出来る。

タスクと呼ばれた男は、目の前の惨状に目を向ける。無数に転がっている死体。何か鋭利な刃物で切り付けられ、おそらくは即死。ここ最近同業者の間で噂になっている、切り裂き魔。その腕を見込んでか、組織全体で奴を探している者たちもいるらしい。


「……それにしても……これ全部、あの切り裂き魔の仕業……?」

『……さあ? けど、こうも毎回獲物取られるってのは正直困るわな』


そしてそういう奴らは、小さい組織故に大概裏で非合法なことをしていることが多い。タスクたちの仕事は、そういった者たちの処分だ。とはいえ、タスクが現場に直接赴くことはほとんどない。彼の主な任務は、ハッキング。現場の監視カメラの映像を差し替えたり、通信機器の電波を妨害したり、そのカメラの映像を見て、敵の位置を割り出したりするのがタスクの仕事だ。現場に直接赴くのは、主に美月みつきという少女の役目。

 そんなわけで、そんなならず者たちがうろついていると連絡を受け、美月みつきや他の者が現場に向かうのだが、いつもすでに皆事切れている、というわけだ。


「……そうね。無駄足もいいとこだわ」


一通り現場を見て回ると、美月みつきもまた闇に紛れて消える。


「……美月みつき先輩……!?」

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