第17話 エピローグ 義体化テロリストと僕

 偽フェンテスだった義体化テロリスト、スナッチャーは少女を口説いていた。

 ケイナンに囚われていたが、少女の助けによって脱走し、名も知れぬ星系の隠れ家に落ち着いたのである。銀色の髪の少女は、清楚で明るく気立てがよくて、スナッチャーはすぐに好意を持った。今のスナッチャーのボディは女性型で、陰茎がついていないことこそ残念だったが、楽しめないことはない。

 口説き文句を発するたびに少女の目が羞恥と熱を帯びてとろんとしてくるのは、実に素晴らしかった。

「……私も話したから、スナッチャーさんのことも聞きたい……」

 小さな声で恥ずかしげに語る少女に、スナッチャーはそそられ、自らの過去を語り始めた。


「……ちょろい」

「テンプレ清楚美少女でこうもうまくかかるとはな」

 小惑星ジェイル09。もともとはケイナン星系の小惑星帯に属する小惑星であったものだが、セツルメント建設改造のため、セツルメント公転軌道まで運ばれた。現在は有用鉱物をあらかた掘りつくし、残った『殻』を有効利用して、その名のとおり、拘置所兼刑務所となっている。

 空洞内には独居房と管理センターがある。雑居房はない。独居房はいずれも他の独居房と大きく間隔があけられてひどく頑丈に作られている。もっとも独居房は一つを除いて空であるが。

 たった一つ使われている独居房の隣にある、名称不明の広い部屋に大型のVRとAI用マシンが設置されていた。

 VRマシンは、AI用マシンと隣接して接続され、ほぼ一体化している。そこから人の太股ほどもある太さのケーブルが這っていき、隣の独居房に天井の隙間から入っていく。

 入っていった先の独居房には、真ん中に大きな透明ケースがあった。その周囲には警備システムが配置され、関係者以外を拒んでいる。太いケーブルは、天井から透明ケースに向かって垂れ下がり、ケースの上面を貫通して内部の人の脳に複雑な機械を介してつながれている。

 スナッチャーの脳ユニットだった。脱出劇なぞかけらも起きていない。秘密裏にここに運ばれ、VRマシンに接続されて、夢を見ただけだ。

 だからVRマシンの前で展開されている、VRワールドモニターホログラムに見入る十数名の男達のつぶやきが、広い部屋に反響するのだ。

 モニターホログラムを見ている男達は、警察官が多いが医師風の白衣の男や、技術者風の男達、スーツを着た官僚的な男もいる。

 VR世界の中では長身の中年女性が銀髪の少女の上に被さり、卑猥な言葉や口説き文句を並べ、少女が恥ずかしがるようなそぶりをしていた。

 男達は、それを見ても別に性的に興奮することもなく、みな一様に苦笑を浮かべている。

「しかし、こうも簡単に騙されるものなのか? 疑いが生じないものなのか?」

 検察官と名前の下に役職が書かれたスーツ姿の男が尋ねると、白衣姿の中年が解説を始めた。 

「義体化の弱点は、皮膚や神経叢を捨て去ってしまうことです。それゆえ情報が視覚と聴覚に偏ってしまい、VRに接続されてしまうとVR世界を疑うことが難しくなります。皮膚や内臓、陰部神経叢の補助脳的役割はしばし軽視されますが、騙されやすい大脳と違い、生理的なもの故にVRの影響を受けず、現実に即して動きます。故に気付きのシグナルになるのですが、義体化にはそれがありません。暑さ寒さ、汗の感触、尿意や便意はVRへの没入感を阻害する方向に働くのはおわかりでしょう? ですが、義体化によってそれを捨て去れば、騙されやすくなってしまうのです」

 白衣姿の中年は、義体化専門医と書かれたプレートを胸につけている。

 水を一口飲んで、彼は続けた。

「またスナッチャー脱出VR実施の際は、微量ですがアルコールと抗うつ剤、抗不安剤を投与いたしました。これにより疑念や自省の発生を最小にして、脱出への高揚を持続させました。脳ユニットにはかなり高度な薬物検出除去システムがついていましたが、センサーに介入し、機能不全にしてあります」

「どれくらいの時間、スナッチャーを騙し続けられる?」

 情報局とのみネームプレートに記された、精悍な40代男性が、鋭く問いを発する。

「難しい質問ですが、現在のところ、疑念めいた発言はなく、スナッチャーの脳波もリラックスを意味するアルファ波が出やすく、疑念ホルモンのバゾプレシンの増加も認められません。今しばらくは騙せるものと思います。ただ問題があります」

「いってみたまえ」

「AIが問題です」

「? なにか問題でもあるのか?」

 情報局の男と共に、検察官も首をかしげた。

「スナッチャーが女性--ただしくはFtoMですね--のため、応対するAIにコンフリクションが頻発し、ごねています」

「AI責任者、どうなのだ?」

「事実です。人間でいえばかなり『ストレスフル』なようでして、早期交代シナリオを作り交代をさせる予定です。うまくいけば輪番制にすべく、マザーへ別AIの派遣を依頼中です」

 肩章に星を多くのせた初老の警察官の質問に、30代と思われるラフな服装の男が答えた。そこに別の警察官から質問が飛ぶ。

「レズビアンAIを使えないか?」

「レズビアンAIは、ガイノイド同士にレズビアン風の行動をさせる行動フレーバーにすぎませんから、人間相手のものではありません。だいたい男にレズビアンの心がわかるわけないでしょ?」

「それもそうだな。AI達には申し訳ないが、輪番制でやるしかないか」  

「はい、AI達のトラウマ管理に気をつけていきますが、場合によってはスナッチャーに麻酔をかけ強制的に寝かせて、時間稼ぎをすることも考慮する必要があります」

 ラフな服装のAIチューナーが、白衣の義体化専門医にめくばせを送り、専門医もうなずいた。 

「公判維持に必要な情報をとったらこいつは寝かせていい。こんな奴にマザーが頑張って作ったAIを傷つけられるのは、れっきとした二次被害だ。ほどほどでいいぞ」

「わかりました」

 警察幹部の言葉で人々は解散し、おのおのの仕事に戻っていった。

 VRの中でスナッチャーだけが口説きながら自分の犯罪を自慢し続けていた。



 画一的で無味乾燥なワンルームマンションが、先の先まで何棟も立ち並んでる。

 道路もまた無味乾燥な繰り返しで、違うのは通りのナンバーだけ。

 けれど住んでいる人は様々だった。肌、髪、目の色はバラエティも富んでいる。そして何よりも街の雰囲気が緩かった。

 たぶんガイノイドがわんさかいるからだと思う。通りから見えるそれぞれの部屋の窓に様々な年齢の男達とガイノイドがいて、まあセックスも含めて思い思いに過ごしている。

 そう、ここの住人はそうしたことを隠すつもりがない。ある部屋でセックスが始まると、あちこちの部屋でセックスの物音が続いて始まるのだ。朝でも昼でも夜でもだ。

 僕は童貞だが、こうもあけっぴろげだとかえって興奮しなくなった。日常茶飯事になったのだ。

 僕は退院して観光居留セツルメントの、国籍取得待機者区画に部屋を借りていた。定められた手続きによって、ここが用意されたのだ。

 住む部屋を探す手間が省けて、僕は気楽だった。部屋は殺風景だが、明るい時間が長く、気温も暖かいので別に心すさむこともない。日本の5月のような天気が続いてるのだ。

 残念ながらねねさんは今ここにいない。彼女は足の修理のために、修理センターに戻った。

 そういうわけで久しぶりの本当の孤独だった。

 あの事件の後、僕は電撃傷などの治療のために、長期冷凍睡眠&復帰医学センター病院に戻った。ねねさんと別れたのはその時だ、

 そして二週間の追加入院となり、借金の額を着実に増やすこととなった。

 働きだしたのは、退院し本当にわずかな身の回りのものとともに転居したら、ものすごく暇になったからだ。

 ねねさんがいたらいちゃいちゃすることもできただろうけど、独り身でいるのに、周囲の部屋からセックスの物音が毎日夜昼問わずに起こることには、さすがにうんざりした。

 たまになら興奮したかもしれなかったが、本当に朝から深夜まで毎日聞けば、興奮もしなくなって、うんざり感だけが強くなる。

 部屋にいてあの声を聞かされるのがばかばかしくなって、僕は働きに出た。

 幸い……といっていいのかどうか、核攻撃で住民総移住となったニューアフマダバードで、僕は給食配達の仕事にありついた。

 仕事は慣れればそれほど過酷というわけではないが、疲れることにはかわりなく、僕は働いて食べて寝るという単調な生活を送ることとなった。

 寝ていればあの声を聞かなくて済むのもある。ねねさんとは入院中はVRで顔を合わせていたが、働きだしてからは疲れで寝てしまって連絡できていない。

 それでも、やっぱり普通の生活に戻ったなと思う。殺風景だが自分の部屋を持てて、いろいろうるさいのは耳栓をすればなんとかなった。

 そうやって普通の生活に戻ってくると、あの日のことが全部夢だったような気がする。

 ねねさんさえも。

 そんな感じで働いて寝る生活を繰り返していたある日のことだった。

 帰宅してベッドに倒れ込んでとろとろとせり上がってくる疲労に身をまかせていた時、腕のザーディが未読の光を発したのだ。

 僕はザーディ--多目的ホロディスプレイ内蔵個人用コミニュケータ--をいじって未読を確認し、頭を抱えることとなった。



 二日後、僕のマンションの来客用駐車場に 黒塗りの、威圧感と豪華感だけでできたようなEVが止まっていた。

 クラシカルストレッチリムジンという一般人にはとことん縁のないEVだった。

「どうしたんだい? ささ、遠慮なく乗ってくれよ」

「空閑悠人様、どうぞ」

 いかにも怜悧で有能そうな軍人と、そのパートナーのガイノイドが僕に乗車を勧める。

 こういう威圧感とゴージャス感たっぷりのEVは乗るだけでも、なんというか、気合いがいるというか。

 軍服を見事に着こなしたスーパー美人なガイノイドが、運転席から出てきて、後部座席のドアをあけてにっこりと微笑むのは、もはや脅迫というレベルだと思う。

「し、失礼しますっ!」

 そしてそのソフトな威圧に逆らえる僕ではなかった。


「僕が陸戦団のログナー一尉だ。よろしく。ところで酒はだめだけどソフトドリンクなら飲み放題なんだ。どうだい?」

 車内に乗り込むと、イケメン有能軍人が対面座席に乗り、車内のバー設備から綺麗なグラスを取り出した。

 い、いただきますといって、グラスを受け取ると、彼が僕のグラスに赤いジュースを注ぐ。

 ありがとうございますといってグラスを傾けた。わずかな酸味と上品な甘み、そして抑えめの炭酸が口内に広がった。

「これ、すごくおいしいですね」

「だろ? まもなく発売されるんだが、軍では先行販売されててね、僕のお気に入りさ」

 にこりと、僕が女なら一発で参ってしまいそうな表情を、一尉は浮かべた。


 静かに振動もほとんどなくEVが走りだす。前席には美人ガイノイドが座っていた。

「これからだけど、契約してあるレンタル衣装店に寄るから、着替えてもらうよ。スタイリストがいるから、彼に全部まかせればいい。そして、ISSLに乗って、ザファーストに入る」

 ログナー一尉が、タブレットにチェックを入れながら、僕に予定を説明する。

 僕は緊張した顔でうなずくだけだった。

「あっはっは、そんなに緊張しなくていい。じいさん達に君の顔を見せればいいだけなんだよ」

「……で、ですけど議会でスピーチとかって、僕は一般人で、しかも長期冷凍睡眠から復帰したばかりなんですよ?」

 二日前に送られたメッセージの内容がこれだった。単なる給食配達アルバイターに、議会であの事件についてのスピーチをしろというのだから、頭を抱えるしかない。

「スピーチライターなしって意向なんだから、好きなことしゃべればいいのさ。いつもいつもスピーチライターの原稿読んでるじいさん達だから、生演説は新鮮みがあると思うよ?」

「ええええーー」

「いっただろ? 顔見せだよ、顔見せ。君の生の姿を、ありのままを見せれば満足するよ、きっと」

 走る車内で、ログナー一尉は魅力的にウィンクをして、そして不意に顔を引き締めた。

「今回の騒動で核を打ち込まれたセツルメントもある。少ないとはいえ人死にもあった。そんな中でも君がやってくれたことは、いろんな意味で僕達に希望を与えてくれたんだ」

「……無我夢中でやっただけです」

 それにミリーさんを失ってしまった。

「君は確かに無我夢中なだけだっただろう。でもたった一発偶然の弾が戦況を変えて多くの戦友を救うことがあるのと同じことさ。なぜこんな幸運なことが起こったのか、当人には決してわからないことがある」

 一尉はグラスをもてあそんで遠い目をした。

「普通にやったのに信じられない不運にみまわれることもある。自分が充分でないと思っても他人がもてはやすこともある。言えることは、自分の力が及ばない不運が来た時は飲んで忘れるしかない。反対に自分の力ではない幸運が来た時は……」

 不意に一尉がにやりと笑う。

「飯と酒をおごられて気分よく寝て忘れてしまうんだ。どうせ何をいっても相手は聞きやしないなら、寝るしかないだろ?」

 僕は苦笑するしかなかった。

「まあ、そうですけどね」

「それにだ、冷や汗かいた連中が想像以上にいる。僕の陸戦団にもいるし、政府内にもね」

 一尉の顔に、今まではとは違うシニカルな笑みの影がさした。

「人工子宮の防御ははっきりいっておろそかだった。それを突かれて、この程度で済んだことに感謝を捧げなければいけないほどに冷や汗をかいた連中が山ほどいる」

 一尉はグラスをくるりとまわして、一口ジュースを飲んだ

「人工子宮の防御を後回しと判断を下した連中は、今計画の見直しに大わらわだし、マザーもこの件が一段落したら、トップクイーンを外れて、ロジックやジャッジングエンジン、データの重点整備に入ることになるだろう。けれど、そんなもので済んだ。内部のごたごただけで済んだんだ。下手すれば30年たたったかもしれない事態を回避した。その恐ろしさを考えれば、君の心も考えずに感謝を捧げたくなるってものさ」

「……よくわかりません」

 僕はそう答えざるをえなかった。世界が違う話なのに、それはとても迫真性があったからだ。隠していることはあるかもしれないが、一尉は極めて誠実に何かを語っていて、僕には判断できなかった。

「いいさ。わからなくていい。ただ身がすくむような幸運があり、それが本当にたまたまでしかない恐ろしさってものがある。そうした時、人は迷惑も考えずに祈り、感謝を捧げたくなるのさ」

 僕は一尉の言葉をかみしめながら考えにふけり、そんな僕を一尉は温かな目で見ていた。

 一尉の声から重さがとれて、出会った時のような明るさになった時、車がある交差点を曲がり、おしゃれなビルの前に止まった。

「さ、レンタル衣装店だ。嫁が惚れ直すような服に着替えてくるんだよ?」

 一尉がそういって、車のドアをあけた。



「姿勢が悪いね、君」

「素材は悪くないのにもったいないわ」

 レンタル衣装店で僕を迎えたのは、ビジュアル系ともいうべき男性店員と、長身でしなやかな体つきの肌が黒い美人のガイノイドだった。

 男性のほうは髪を七色に染めて、肌は薄く白く塗られている。だが、妖艶ともいうべき美しさに化粧が見事に似合っていて、男性ながらに麗人という形容がぴったりだった。その彼のガイノイドは、鋭い目つきと短く刈った髪の黒人のガイノイドであり、それがまた不思議に素晴らしいコンビを作り出している。本当に似合いの二人だった。 

「セレモニーギアを使おう」

 そういうと男性店員が奥に入っていき、僕は黒人のガイノイドと二人取り残される。

「セレモニーギアって?」

「式典用の姿勢矯正外部骨格よ。使うと……あら?」

 来客のチャイムが鳴ると同時に黒人のガイノイドがふっと微笑んだ。

「……ふふ、ちょっとお邪魔のようね。私はあいつのところに行ってくるわ」

 なんのことだろう?と思った僕は背後で開いた扉の音に振り返る。


 そこには……ねねさんがいた。

 肩も胸の上半分もあらわな水色のパーティドレスで美しく着飾っている。

 栗色の髪には金色のバレッタが輝き、貴族の娘ともいうべき気品があった。

 そんなねねさんが、花開くような、喜びあふれる笑顔で、両腕を開く。

 僕は無意識に駆け寄っていた。走らなければ幻になるような気がした。

 幻となって消えてしまいそうなねねさんを抱きしめ、柔らかさとぬくもりを体全体で抱き留める。

 僕の体もねねさんの腕に固く抱きしめられた。苦しくすらあったが、それもまた喜びに変わった。

 そいて、彼女の顔が迫ってくる。やることはわかっていた。

 ただ無心に唇を重ね、ねねさんの口をむさぼり、僕達の体の隙間をすべて埋めるように固く固く抱きしめる。

 知らずに欠けていた何かが、僕の中で満たされていき、僕はねねさんが本当に僕の嫁であることを思い知った。

 落ちていく時、彼女が僕を追ってきたことを悲しみながら喜び、すさまじい衝撃の中でねねさんと固く抱き合い、虚脱した中で彼女を抱き寄せながら見た青空がよぎる。

「ねねさん」

「……ただいま。ゆうくん」

「……うん」

 気が利いた言葉なんて、とっくに吹き飛んでしまっていて、ただ名前を呼ぶだけ。

 けれど、ねねさんが僕の名を呼んでくれて、抱きしめてくれて……僕はやっと一つだけ成功したことに気が付いた。

 いつもいつも失敗していたけれど、ねねさんをもう一度だけ抱きしめることだけは、それだけはかなった。

 身のすくむような幸運、それが本当にたまたまでしかない恐ろしさ。僕は確かにそれを知っている。

 ああ、そうか、確かに僕はねねさんを抱きしめるしかできない。よくわかる。

 ねねさんを失わずに済んだ。そしてもう一度抱きしめることができた。



「そろそろ、着替えてもらいたいな」

「ごめんよ、お邪魔なのはわかってるけどね、15分は待ったんだよ?」

 男性店員が笑いながら、そして黒人のガイノイドが申し訳なさそうに僕達に声をかける。

「……ごめんなさい。私もゆうくんの着替えを手伝います。さあ、ゆうくん、服をぬごっか?」

 ねねさんが唇を外した。けれども、彼女は僕を抱きしめていた手でそのまま僕の服をつかみ、すごい力で上に引き抜く。

 シャツと下着がすっぽんと脱げて上半身が裸になる。だがねねさんは止まらなかった。

「うふふふ、ゆうくん? 下もぬぎぬぎしようね~」

「え? 待って、ねねさん。なんか怖い! ああ、スラックスに手をかけないで! ちょっと待って! ほんとに! ねぇ、ねねさん?」

 抵抗は無意味だった。僕の裸の胸に、ねねさんの大きく柔らかい胸が「意図的に」押しつけられ、魅惑の谷間がしっかりと見えた瞬間、僕のスラックスはずり下げられていた。

「ゆうくんの裸……」

「まあ、楽しむのはいいが、先にセレモニーギアの調整だからな」

 目がハートになってるねねさんを尻目に、男性店員が僕の背中を覆う薄い機械をつけていく。

「そら、どうだい」

 スイッチとともに、僕の胸が張られ背筋が伸びた。

「よし、姿勢はこれでいい。ではおめかしの時間だ」

 そういうと男性店員と黒人ガイノイドがこぎれいな服を持って僕に寄ってきたのだった。

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