作品ごとのあとがき

伊乙志紀(いおつ しき)

憑依騎士道 ~幽霊の力を借りて民と国を救います~

 ここは拙作「憑依騎士道~幽霊の力を借りて民と国を救います~」の解説とか、裏話をぶっちゃけます。

 多分にネタバレを含みますので、本作を読み進めていらっしゃる方、もしくはこれから読もうと思っている方は後で読んだほうが楽しめるかもしれません。

 既に読み終えた方はもちろん、途中でもネタバレオッケー!という方はどうぞご覧くださいまし。



































 本作の出発点は、ライトノベルの新人賞に応募する作品を練っていたときの、とある思いつきがキッカケです。


「最近は異世界転生ものが流行りだよなーでもあんまり読んだことないんだよなーむしろ俺は転移とか召喚系が好きなんだよなー魔神英雄伝ワタルとかレイアース好きだったしー(年がバレる」


 じゃあ現実世界から高校生くらいの主人公を転移させよう。

 でも普通の子を転移させるんじゃ面白くない。なんか変わった子がいい。それで活躍できるのがベスト。

 同時に設定も考える。


「舞台は中世ファンタジーにするとして。中世といえば百年戦争か……ジャンヌ・ダルクが有名だな。確か神の啓示を聞ける聖女として軍を率いてたんだっけ……そうだ、霊感の強い現代人が転移してジャンヌ・ダルクみたいに祭り上げられる話にしたら面白いんじゃないか?」


 ということで、主人公は霊感があって幽霊と話すことのできる子、という設定になりました。中世が舞台なら頻繁に戦争が行われていて死人も多く発生するでしょう。

 更には暗殺やら謀略やらがあっても、現代みたいな鑑識技術がないので犯人を見破れない。

 そこで現世に残った幽霊から情報を得た主人公が事件を解決し、周囲から神の使いだと崇められ、最終的に戦争回避まで持っていけるような大物になっていく……

 これが初期プロットの形でした。

 しかし、既に読み終わった方々はお気づきでしょう。


 ま っ た く 違 う や ん け 、と。


 というか、ミステリー調のプロットに更に色々盛り込んでいった結果、めちゃくちゃスケールの大きい話になっていました。妖精さんが夜な夜な書き足していたに違いありません。

 主人公もただの霊感持ちではなく憑依能力で戦うようになったし、パートナーとして作ったヒロイン(幽霊)が物語の中心に据えられました。

 結果的には人々に崇められる神の使いとしての物語ではなく、異世界に召喚された勇者の物語、という王道になった次第です。

 思うに、召喚されたキャラクターはなんで選ばれたんだろう? という疑問への自分なりの答えを書きたかったのかもしれません。

 普通であって普通でないことが大切なのかな、という感じです、はい。それが主人公ユキトの生き様となりました。


 ただ、中心テーマとして残しておいた

「別れに伴う感動のドラマ」

「女性も男と同じ位置にいける」

 という部分は、変貌したプロットの中でもしっかりと書けたのが満足でした。

 なぜこれが書きたかったかというと、ぶっちゃけていえば『Angel Beats!』というアニメに感化されたからです(ドーン

 このアニメは学園に似せて作られた死後の世界が舞台で、少年少女達の「執着、未練」が物語に深く関わっています。

 ネタバレになるので多くは語りませんが、最終回のシーンがとても綺麗だったんです。賛否両論ある終わり方でしたが、あの二人きりの場面はなにか心にくるものがありました。

 いつか自分なりの解釈で書いてみようと思っていたことを、今回実行に移しています。

 女の子を男と同等に活躍させたいっていうのは、アナ雪とかラプンツェルの影響かもしれません。某パプテマス様もこれからは女の時代だよって言ってたし(?


 ******


 余談ですが、この最終プロットに至る前にもう一つ別の案を考えていました。

 霊感が強いという点は同じですが、主人公は女の子。

 異世界に飛ばされてふらふらさ迷いながらも幽霊の未練を叶えてあげたりしてると、いつの間にか聖女なんて呼ばれるようになって、最重要人物として国に囲われる始末。更に彼女専属の騎士(無愛想な美形)が付けられたり、王様が勝手に王子(心優しい美形)との婚約を決めちゃったりする異世界恋愛ファンタジー路線です。

 初期案に近い物語ですね。でもバトルが書きたかったので没にしました。

 憑依騎士道を書き終えた今は、こっちの案をリブートしてもいいかなーとも思うのですが……


 むしろ誰か書きません?


 聖女と称賛される普通の女の子が皆から期待されるけど、お付きの騎士は無愛想でお前なんか役に立つわけないと喧嘩ふっかけてくるし、宮廷では女中や姫から嫌がらせを受けるし、なんにもできないことを思い知って凹むけれど。

 トラブルに巻き込まれた中で騎士との信頼関係が芽生え、自分にできることが少しずつ増えて自信を取り戻し、少女は活躍を始める。

 すると王様が王子との結婚を決めて城内は大騒動。王子は困るけどまんざらでもない。騎士は心中穏やかじゃないけど主君のために本心を隠す。

 そうこうしている内に戦争の兆しが見えて、聖女の力が必要になる。

 さぁヒロインの未来と恋の行方はどうなるのか!?


 っていうのが読みたい。少女小説チックなので僕には書くのは難しいです。

 その企画もらった! って方がいらっしゃるならご一報を。読みに行くぜマジで。


 ******


 脱線しました。憑依騎士道の話でした。

 本編は完結しましたが、内容としては「第一部 完」という終わり方です。

 構想としては、RPGゲームみたいに世界中を巻き込む大波乱へ続く予定でした。

 ラスボスだった邪神アマツガルムの他に四体の邪神が残っていますが、こいつらを倒すまでが一つの物語になります。


 ですが、一体何文字書けば終わるのか?

 今の段階で55万字。自己最高記録です。書き始めてから一年もかかってます。

 邪神一体倒すだけでな!


 ということできりのいいところで終わらせようという判断になったのでした……ほんと途中からしんどかったので、長期に渡って書き続けられる人は凄い。


 さて。

 続きが気になる人がいらっしゃるかもしれないと思ったので、ちょこっとだけ蔵出ししておきます。


 聖ライゼルス帝国は先の戦争で大敗を被り、扇動した皇子一人が失脚する。これに伴い残った三皇子同士の王位継承権争いが勃発して、帝国は内乱状態へと突入した。

 帝国に入り邪神の痕跡を追っていたユキトは、聖ライゼルス帝国最高位騎士<十剣侯>の一人から、内乱を止める手助けを求められる。

 一方でダイアロン連合国では新たな三州長が決まり、体制を整え始めていた。ジルナも科学技術の導入を進めて農作物の生産量増加と、流行病の治療薬開発を試みる。

 しかし宗教団体ラオクリア教が政治への関与を狙って暗躍し、本物の導師の力を持つ憑依騎士ユキトの利用を企む。

 北方ギルド同盟、極東諸島連合といった他国も介入し始めて、東大陸の情勢は混迷を極めていく……。

 というのが大まかなあらすじです。


 各キャラクターの動きですが。

 ユキトは相変わらず困ってる人のために首を突っ込んで、今度は帝国の王位継承権争いに巻き込まれます。

 ジルナは州長として活躍する一方、全然帰ってこないユキトにやきもき。守護兵団分隊長のサイラスにアプローチされ始めたけど、でもユキトをずっと待ちたい。

 ルゥナはユキトに付き従っているのは変わらず。しかし彼がところかまわず女の子に優しくするものだから(人も幽霊も関係なく)こっちもやきもき。

 更にもう一人ヒロイン(霊感持ち)が登場。ユキトと行動を共にするからさぁ大変。ユキトと相思相愛になったルゥナでも、やはり悩みます。


 そして重要な点が一つ。

 ルゥナはどうなるのか? このままなのか? ということですが……

 ヒントは、メディウス教です。

 この宗教団体は人の蘇生を目指して活動していました。彼らが考えていた方法とは、です(本編中にちらっと出ていました)。

 死と再生の神アマツガルムが取った方法は固有情報の操作というもっと直接的な手段であり、本編中では固有情報を糧にして肉体を強引に操ってただけなので、狭義では異なっているといえます。

 わずかに生き残っていたメディウス教の信者たちは、まだ悲願を諦めていません。魂を肉体に戻す方法を完璧なものにするため、とある魂――すなわちルゥナを狙い始め……


 ここまで書いておいてなんですが。

 先に書いたように膨大な執筆量となるため、続きを書くかどうかは未定です。

(設定を羅列するだけなら簡単なのになぁ苦笑)

 続きを読みたい! という声をかけていただければあるいは、とも思いますが、現段階ではこのように考えているということをご理解いただければ幸いです。

 もし続きを書くなら「神威騎士道~幽霊の力を借りて民と国と世界を救います~」という続編チックなタイトルになるかな。


 それではここまで。

 本編を読んでいただいた方々に改めて感謝の気持ちを。

 本当にありがとうございました!

 これから読まれるという方は、どうぞよろしくお願いいたします!

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