第31話 女性化第二形態…大陰唇

 木曜日の朝がやって来た。


 僕は股間の痛みで熟睡する事が出来なかった。


 結果的に、僕の精巣の痛みは一晩中続き、精巣自体も腫れているように感じた。


 これ以上は放置出来ない…。


 僕はいつもよりも早く起きてリビングに向かった。


「母さん…ちょっといいかな?」


 母は僕の表情を見て緊急事態だと理解してくれたようで、僕と一緒に洗面所まで来てくれた。


 僕は母に状況を説明し、ショートパンツを脱いで股間を見てもらったが、母は自分では分からないと言い、父を呼びに行ってしまった。


 父親に下半身を見られるのは気まずい…でも、そんな事は言っていられないか…。


 父は僕の股間を見ると表情を変えた。


 どうやら、僕の股間は異常な状態になっているようだ…。


 しかし、医学の専門知識のない両親では、僕の異変の詳細が分からなかったので、僕は学校を休んで病院に連れて行かれる事になった。


 股間が痛い僕はガードルを穿く事が出来なかったので、部屋着のショートパンツのまま父の運転する車に乗せられた。


 幸い、病院は直ぐに僕を診察してくれた。


 お医者さんは、僕の症状を診て直ぐに僕の精巣が捻転している事に気づき、応急処置をしてくれた。


 すると、僕の股間の痛みは嘘のように和らいだ。


 しかし、僕の症状は深刻なようで、その後も診察をされる事になり、MRI検査を受けた後、分娩台での診察を受ける事になった…。


 分娩台に寝るのは初めてだ…脚を開いた状態で動けない…きっと、これ以上無防備な姿勢はないだろう…。


 検査の度にお医者さんが増えていく…皆に大きく股を開いた姿を見られるのは屈辱的だ。


 10人くらいのお医者さんがいる…中にはカメラで僕の股間を撮影している人までいた。


 マニアックなAVの撮影みたいだ…。


 お医者さんの中には、僕をクラインフェルター症候群だと診断した柴田先生もいて、両親と深刻な表情で話し合いをしていた。


 標準的だと思っていた僕の男性器は、かなりレアな物のようだ。


 やがて、柴田先生と母が、僕が股を開いて寝ている分娩台までやって来た。


「柏木さん…落ち着いて聞いてね…あなたは性器も女性化していたの…それに、精巣も危険な状態で手術が必要なの…」


 えっ、手術…!


 すると、先生は僕の性器について詳しく説明をしてくれた。


 結論から言うと、僕の男性器は普通ではなかった。


 僕の男性器の外観は普通の男性とよく似ていたが、体内の構造が違っていた。


 僕のペニスの体内の構造は、女性のクリトリスに近い物だった。


 普通の男性のペニスは、尿道海綿体と二本の陰茎海綿体が肛門の近くまで束になっていたが、僕の海綿体は女性のクリトリスと同様に体内に入って直ぐの所で左右に分かれていた。


 今までの僕は、体内の海綿体が女性として発育していなかったので、外観が普通の男子と見分けがつかなかった…。


 十日程前に性器を触診された時は、未発達の精巣が診察対象だったので、お医者さんも僕のペニスの異変には気づかなかったようだ。


 それ程に僕の性器の見た目は普通だった。


 しかし、体の女性化に伴い、左右に分かれていた海綿体が女性の大陰唇として発育し、その結果、僕の股間には割れ目が出来ていた。


 女性の大陰唇の役目は、割れ目を閉じる事で膣に異物が入る事を防ぐ物だったが、セックス時に大陰唇内の海綿体が膨張する事で、挿入されたペニスを強く挟み射精を促す役目もあった。


 女性化した僕は、乳房だけではなく性器も女性化していた。


 いや、僕の性器は産まれた時から普通の状態ではなかったが、体の女性化に伴い、その違いが顕著に現れ始めたと言った方がいいかも知れない。


 しかし、見た目は普通の男性の性器とよく似ている…それに、僕は普通に女性とのセックスも出来た…。


 僕の初体験は中一の時で、それからも何人かの女性と関係を持ったが、相手から奇異に思われる事はなかった。


 相手が経験不足の同級生だったから僕の異変に気づかなかったのか…いや、女子高生や女子大生とした時も何も言われなかった…彼女たちは経験豊富で、僕のおちんちんを咥えていたから、目の前で確認していた筈だ…。


 すると、柴田先生はタブレット端末に画像を映し出した。


 先ほど撮影された僕の股間の写真だ…真下からのアングルは恥ずかしい…。


 あれっ、以前と形が少し変わっているかも…。


 おちんちんと金玉を囲むように、溝のような窪みが出来ている…まるで、割れ目の隙間から、おちんちんが生えているみたいだ。


 柴田先生は、僕の股間の写真と並べるように、普通の男性の股間の写真を表示させた。


 金玉の大きさが全然違う…昨日見た悠斗の物に近い。


「陰茎の根元を見て、柏木さんの陰茎は一般的な男性と比べて、少し後ろに付いているのが分かる?」


 柴田先生は、それぞれの性器を横から見た画像に切り替えてそう言った。


 確かに、僕のおちんちんは下に向かって生えている感じだが、一般的な男性のおちんちんは前に向かって生えている。


 すると、今度は黒人男性の股間を横から見た写真に画面が切り替わった。


 えっ、今の僕のにそっくりだ…。


「この人は女性のボディビルダーで、男性ホルモンを大量に摂取した事により、外陰部が男性化したケースなの」


 えっ、これって女性なの!…僕のよりは小さいけど皮が剥けたおちんちんがあるけど…。


 すると、画面が切り替わり、同じ人の性器を真下から見た写真が映し出された。


 本当だ…女の人だ…おちんちんの裏が割れていて、ビラビラとした小陰唇がついている…しかも、小陰唇の間に膣らしきものもある…。


 このペニスみたいな物は、肥大化したクリトリスなんだ…。


 僕のペニスと写真のクリトリスとの違いは、左右の小陰唇が繋がっている事と、尿道海綿体が亀頭まで繋がっている事だ。


 普通の男性の尿道海綿体は、亀頭から肛門近くまで二本の陰茎海綿体の下に密着していて、根元が尿道球と呼ばれる膨らみになっていた。


 しかし、僕の尿道海綿体は、体内に入って直ぐの所で尿道球になっていて、その尿道球が左右に割れていて女性の前庭球として発育していた。


 僕の体は、産まれた時から見えない所で女性化していたんだ…。


 僕の体内の海綿体は大陰唇として発育し、その隙間に精巣が挟まった事で、今回の精巣捻転が発生したとの事だった。


 二つの精巣が同時に捻転を起こす事はレアなケースらしいが、僕の体内の海綿体の形状から考えて、僕は遅かれ早かれ精巣捻転を起こしていたそうだ。


「でも、良かったですね。柏木さんの場合は、性別適合手術で体を女性化するので、これは望ましい事ですよ」


 別のお医者さんが、僕を安心させる為に、笑顔でそう言ってくれた。


 これは、良い事なのか…。


「精巣捻転であなたの精巣は壊死寸前の状態なの…でも、将来的にあなたは精巣を摘出する予定だったから、その手術が少し早まったと思えば…」


 えっ!手術って、玉抜きの手術なの!今から?


 すると、母と柴田先生が部屋から出て行き、替わりに入ってきた看護師さんが手術の準備を始めた。


 えっ…心の準備が…。

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