――作品紹介―― 明日の君と生きるため

ヒュパティア「こうして小生たちが集まるのも久しぶりね」


奏「4分の1年ぶりですね」


エル「理由はお察しだな。ここまで一つの企画に熱を上げたのは初めてといってもいいだろう」


カズミ「まあ、得られたものも少なくはなかったし、とても楽しめたよね」


ヒュパティア「我らが大図書館も、未来技術をたくさん「譲ってもらった」おかげで、笑いが止まらないわ」


奏「やってることが完全にハイエナです。本当にありがとうございました」


ヒュパティア「それにエルもちゃっかり出張して、地味に暴れてきたみたいじゃない」


エル「俺が召喚霊であることをいいことに、色々こき使いやがって。しかも、どうせなら子供の頃じゃなくて、今の姿のままがよかったな」


カズミ「そんなことしたら、戦いが一方的過ぎて逆につまらないことになりそう…………」


奏「では次は私の番ですね。竜舞式護身術がすべての拳法を過去のものにします!」


エル「竜舞式護身術自体がすでに過去の遺物だと思うのだがな」


奏「失礼な。延髄を砕いて再起不能にしますよ」


カズミ「相変わらずこの二人は物騒だなぁ」


(スタッフの笑い声)


――――今回のテーマ――――


『衰弱勇者と災禍の剣』

高柳神羅 様:著

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884866644



ヒュパティア「そういえば今回は久々にゲストがいないわね。それはともかくとして、今回紹介するのは一風変わった視点のファンタジー小説よ」


カズミ「主人公は、謎の力を持ちながらも、記憶喪失ですべてを忘れていた少女アメルと、彼女を拾ってくれた元勇者の男性レオンの二人だね」


奏「レオンさんは、この物語が始まる以前に人間と敵対する魔族と闘い、そして勝利した英雄です。そんな英雄の彼は、辺境の町で新米冒険者たちの教育をして過ごしていたのですが、ある日彗星の落下の調査をしていたところ、記憶喪失の少女を保護することになりました」


エル「記憶喪失の少女はレオンによって「アメル」と名付けられ、少女の記憶に微かに残っている場所を目指すため、アメルを冒険者として育てる、という話だったな」


ヒュパティア「このお話は、戦い方もわからないような子供が、新米の冒険者に育っていく過程に焦点を当てたという点が特徴よね」


エル「ふつうのファンタジー小説だと、子供からある程度の年齢まで育つ過程は省略されるか、または触れられても最初期のほんの少しだからな」


カズミ「そりゃアグニ君みたいに幼少の成長過程から一世一代の英雄になるまで全部書こうとする方が無謀だよね………」


エル「あれはそんなとこまで書こうとしているのか(呆れ)」


(スタッフの笑い声)


奏「身内のことはどうでもいいではありませんか。ヒュパティアさんが言っています通り、物語丸々一つがチュートリアルのような形で進行しています。少女アメルちゃんが健気に頑張って強くなっていく姿を、親が子供を見守るような目線で書いています」


ヒュパティア「読んでてとてもほっこりするわね」


カズミ「一話一話も長くないから、仕事や勉強の合間合間に読めるのもいいよね」


エル「とはいえ面白さのあまりのめりこみすぎないようにな。さて、先ほどから話している内容を見て「ん?」と何か引っかかるものを感じている読者の方もいるのではないだろうか」


奏「何しろタイトルが『衰弱勇者と災禍の剣』というなかなか物騒なものですからね。のんびりした内容の想像ができるかどうか」


カズミ「実は主人公のレオンは、魔族との戦いで不治の呪いを受けてしまって、身体が徐々に衰えてきているんだ」


エル「物語開始時点でもすでに最盛期から大分力が落ちているようだ。アメルが彼の教えを受けて徐々に力をつけていくのに対し、指導役であるレオンは徐々に弱っていく。この主人公の在り方の対比もまた、この物語の肝だな」


ヒュパティア「レオンが辺境の冒険者の教育役に落ち着いているのも、死の呪いの運命を受け入れて、自らの技術を更新に伝えていきたいという思いがあるから。日に日に力が失われていくというのは、とても怖いものよね」


エル「そうだな…………不老不死のヒュパティアやカズミはともかく、俺や奏は50年も生きれば何はなくとも力は失われる一方だ」


奏「ですが、自分の力は失われても、それを他人に伝えることはできるのです。ふふ、私もいつか「老師」と呼ばれる日が来るのでしょうか」


カズミ「奏さんは案外、生涯現役で通せそうな気はするけどね」


ヒュパティア「弱っていく自分を達観して受け入れるレオンだけど、むしろ教えを乞うアメルの方が焦るわよね」


奏「修行の道半ばで師を失うのは非常に恐ろしいですからね。かくいう私も、竜舞式護身術の大本を教えていただいた師を、免許皆伝寸前で亡くしていますから、気持ちは痛いほどわかりますわ」


エル「タイムリミットがあるというのは良くも悪くも緊張感が出る。いつまでも親があると思うな、というわけではないが、早く一人前になろうと命一杯努力するし、同時にかなりの無理をすることにもなる」


カズミ「アメルも作中何度も危険な目に遭ってるね。一日でも早く一人前になりたいという焦りが、後半如実に表れているよ」


奏「限られた時間の中で、どれだけ強くなれるか。そして、彼女が途中で気が付いてしまった自分に秘められた力…………それらとどう立ち向かうか、皆さん是非読んで確かめてみてくださいね♪」


ヒュパティア「あと、この作品の見どころのもう一つは、とにかく主人公たちを取り巻くキャラクターたちがとてもよくできてることがあげられるわ」


奏「それも味方の方だけじゃなくて、敵陣営も彼らにも彼らなりの事情があって、意外と苦労しているという一面も見受けられます」


エル「物語を通してしょっちゅう敵対する敵の幹部がなかなかコミカルで、なのに主人公を何回も追い詰めるなど、いい感じに適役をしているのが評価が高い」


カズミ「さながらポケ〇ンのR団のような連中だね…………」


ヒュパティア「毎回惜しいとこまで行くのに、慢心で勝利を逃すのが、本当にそっくりだわ」



カズミ「ところでさ、話は変わるけど3人にも自分が未熟だった時代があったのを覚えてる?」


エル「愚問だな。今回の企画で動いていた幼い自分を見ればわかるように、あの頃は「戦略」という視点が欠如していた。自分だけ強ければ何でもできるという万能感は、今となっては消したい過去の一つだな…………」


ヒュパティア「でしょうね。小生も子供の頃はここまで偏屈な人生を送るとは思っていなかったもの」


奏「私も幼いころはそれはそれは悲惨な生活でしたから。今生きているのが奇跡みたいなものですね」


エル「そう言うカズミは、どうして現代日本で軍人になんかなったんだ?」


カズミ「士官学校を記念受験したらたまたま受かった」


ヒュパティア「こんなのでも学年2番目の成績になれるんだから、世の中分からない物よね」


カズミ「そしてこの物語の主人公レオンさんは、もし呪いを受けなかったら、辺境で指導役をやることはなかったのかな」


奏「かもしれませんね。人の人生にはある程度必然性というのがあるのかもしれませんが、基本的には咲けるとこで咲くのが自然なありかたなのでしょう」





カズミ「それじゃあ、今回の作品紹介はここまで。お疲れさまでした」


エル「ゲストがいないだけで随分あっさりした話し合いになるな」


奏「基本的にゲストさんがいると4対1のドッチボールが始まりますから」


(スタッフの笑い声)


ヒュパティア「今回紹介した作品は、かなり前に企画で見つけた作品なんだけど、その時の企画は本当にレベルが高かったことを覚えているわ」


エル「本当に作者は場違いなんじゃないかと言うくらい、圧倒的な力量差があった。それ以来、読み合い系の企画への参加は自粛しているが…………」


カズミ「いつか、連載している作品が自慢できるくらいになったら、積極的にチャレンジしたいところだね」


奏「そして次回の作品紹介も、今回と同じ企画で出会うことができた素敵な作品をご紹介します」


ヒュパティア「というか、紹介したい作品のストックが溜まりすぎてるのよ。今年中にガンガン消化するわよ!」


エル「あと、奏の子供が主人公の連載もわざわざ話を戻しなおしたんだから、元の文量に戻るまで怠けるなよ!」


カズミ「作者が過労死しないといいけど…………」



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