リアリズムの空

領土の果てから果てまで

青ざめた天蓋としての


地平の彼方でありあまる余白

描かれなかった絵日記としての


縁取られた糖蜜が

営造物の影を橙に染めた


銛のような雷光に暗転し

極彩色の走馬灯をめるくめく浮かべた


淫蕩と資本化の合間にも

落下傘のしたたりで灰色に濡れた


嵐にふるえる飛び魚たちの

愉楽や

革命や

骨の痛みや

吐き気のような怠惰に口笛を鳴らし

彼岸の澄んだ

青や白や橙や極彩色や灰色は

超然とした居住まいの

老嬢のように崩れる気配がない


誰のものでもない空

見上げれば

見下ろされ

見張られている

波のない水槽の魚のように

空に監視されている


あこがれるな

恋焦がれるな

誰のものでもないなら

われわれは

天蓋へ突き立つ電信柱の

足元に凍える吐物にさえ

胸の痛みを誇らなければ

永遠とも思える余生をやり過ごすには

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