バリエーション検証

 昔々、ある所に浦島太郎という漁師が浜を歩いていると、子供達が亀をいじめているのを見つけた。太郎は子供たちを追い払い、亀を助けてやった。すると2、3日後、亀が現れ、礼として太郎を背に乗せ、海中の竜宮に連れて行く。竜宮では乙姫が太郎を歌や踊りで歓待する。

 しばらくして太郎が帰る意思を伝えると、乙姫は「決して蓋を開けてはならない」としつつ玉手箱を渡す。

 太郎が亀に乗って元の浜に帰ると、太郎が知っている人は誰もいない。太郎が忠告を忘れて玉手箱を開けると、中から白い煙が発生し、太郎は白髪で皺老人の姿に変化する。


 まぁ、一般的に伝えられているのはこんな感じだと思う。


「御伽文庫」にある浦島太郎と思われる話の中では、子供たちが亀を虐めていたのではなく、漁師である太郎が釣りをしていると亀ばかりが針に掛かり、「万年も生きる亀を食っては可哀想だ」と思って逃がしてあげた。となっている。

丹後風土記では五色の亀が掛かるとなっている。


亀に乗って竜宮城に言ったという話も、御伽文庫では「数日して漂流した船に乗る女がやってきて、それが亀の化身であり竜宮の姫でもあったとなっている。


竜宮城から浜に帰ってから経過していた時間は100年とも300年とも700年ともあるが、これは「途方も無い長い時間」という意味で、時間の長さにさして意味が無いだろう。「嘘八百」や「萬屋」と同じ意味だ。



「浦島太郎」という名前も、明治以降に苗字が一般化したために付けられた名である。


古い昔話の男の主人公は大抵「太郎」であるのも、無難な名前だったのだろう。


「浦島」という名前はかなり古い伝承から伝えられているが、中には浦島太郎ではなく、「浦島子」という記載もある。


只、ここで言う「子」は女性の名前ではなく、「孔子」や「孟子」と同じで「子

は「先生」という意味である。「小野妹子」も同様な意味があると思われる。

「孔子」は「孔先生」、「孟子」は「孟先生」と言う意味だから、「浦島子」もなにか尊敬されるべき人物だった可能性もある。


そう考えると、浦島太郎が漁師であった事にも疑問が出てくる。


何か海に関わる仕事をしていた人で、一般の人民には理解できない仕事をしていた日とか、海の近くに住み、漁師のように「当たりが掛かるのを待つ」仕事をしていたのか…。



ラストシーンも、「白髪の老人になった」、という所で終わっているものも、両親の墓を探しだし、その他に住んで、両親と同じ墓に眠った、というものも有り、白髪の老人になった直後、苦しみだして死んだ、というものもある。


このラストシーン関しては、私個人的には心優しき伝承者が付け加えた話と思えて仕方がない。


数百年後の地球に帰ってきた男がどれほどの失望感と孤独を感じた事か。その苦痛に苦悶した伝承者が主人公の寿命を縮めてあげたり、殺してあげたりするのは愛情だと思える。苦しまないようにとどめを刺して上げた可能性もありえる。(つまり事実はその逆だった可能性もある)


スマホもパソコンも知らない第二次世界大戦前の人が突然現代にタイムスリップしたらどうなるか。CFみたいに悠長に生きて入られないと思う。

絵空事以上の魔法の技術が横行している世界で生きてはいけない。

それは平安時代でも室町時代でも江戸時代でも一緒だ。

だから、伝承者はすぐに彼を殺してあげたのだろう。



また、ラストシーンに関しては太郎が鶴になって飛び去ったというものもある。

これは「鶴は千年、亀は万年」という対句的な虚飾と思われる。

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