12
車は長い橋のような所に差し掛かった。長い長い橋だ。
それも何十本も碁盤の目のように片側2車線の道が橋になっていた。いや、碁盤の目と言うより、蜘蛛の巣のように複雑に橋がからみ合っていた。
橋脚も吊橋ケーブルもない、ピンと張った灰色のテープの上を無数の車両が走り、人々が歩いている。
下には川や海もなかった。
遥か彼方を見ると、そこが大きなクレーターだということが判った。
爆心地だ。
爆心地の下には、とても人類が作ったものとは程遠い構造物がぎっしり建設されていた。まるで金属で作った昆虫の巣のようだった。
橋は五キロ以上続いていた。
車は爆心地をまっすぐす進んでいった、どこまでもどこまでも。
河に掛かっている橋ではない。巨大なクレーターの上に橋がかかっていた。
それも一本ではない。何十本もの橋がかかり、至る所で交差していた。
橋の下には二百メートル以上はあった。これらの橋の間には、ブレインアジャターの付いている人間には、VRの建物群が見えているのだろう。
やがて、プリウスは橋を超え、再び残骸の中を進んでいった。
そしてまた、残骸は再建設された住宅街や田畑の中を走っていった。
田畑ではブレインアジャスターを付けられた人間たちが何の疑問もなく、楽しそうに農作業を続けたいた。
スィキーダ人のブレインアジャスターに操られて農作業をしている人達だ。何も知らずに。
不思議な事に、農作業をしているのは、本物の人間ばかりなのに、建設業にはスカロイドたちが混ざっていることだった。
やはり、異星人であるスィキーダ人はスカロイド達に地球の農業を憶えさせることが出来ないのだろうか。
青い空の下、平和に農作業を続けている人間たちは果たして不幸なのか。彼には判らなかった。
まるで普通に淡々と作業をし、時々笑みさえ浮かべていたからだ。
ここは且て何市だったのだろう?多分、地理的に見てまだ住宅街のはずだ。なのに今は田園風景が広がっている。ここに住んでいた人達は何処へ言ったのだろう。
型落ちのプリウスは田園風景の中をゆっくり駆け抜けていった。
to be continued
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