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「どうしてお前が…」大貫が噛みつくように叫んだ。


「武器を持ってる大きなコミューンと合流できないと、すぐにヤラれるぞ」


「そんなのは判ってる!何故お前が行くんだ?」


「他に行く気がある奴はいるのか?」鮫川はいつの間にか自分の喋り方がぶっきらぼうになっているのに気付き、内心驚いた。


「ホントに行くんだな!?」大貫も他の者達も鮫川を注視していた。


「ああ、君たちさえ良ければ」

「私達はいかない。君に偵察に行って欲しい」と加山が言った。




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もう夕方だったので、缶詰の夕食をとって、本屋の書庫を寝室として提供してくれた。


出発は翌日の日の出後に決まった。


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 用意された車は自動運転付きの随分型落ちのプリウスだった。

「本気で行く気かね」加山が眼を鋭く鮫川に尋ねた。

「大丈夫です。殺されることは無いんでしょ?」

「そうだけど…」星野が心配そうに眉をひそめた。


「絶対に手動運転するんじゃないぞ」大貫は鮫川の顔を覗くようにして言った。「カーナビ入れてあるから、自動運転モードにすれば、目的地まで安全に運転してくれるはずだ」


「どうして手動じゃまずいんだ?」鮫川が尋ねた。


「奴らにしかわからない理由で、人間には通ってもらいたくない道があるんだ。そういうところは大抵、VR上で工事をしてたりするが、ブレインアジャスターを取った俺達にはそういう光景が見えない。知らないでそのまま進むと、奴らに気づかれてしまうんだ」


「分かった」鮫川は大貫に頷いた。「気をつけて行けよ」


 猿顔の男はしきりに鮫川の立体レントゲン写真を眺めていた。昨日会ったばかりの鮫川がスカロイドではないかと調べているのだ。

「こいつを信用していいんですかね、大貫さん」猿顔がペーバータブレットの3D画像を執拗に眺めながら言った。「奴らの仲間じゃないですかね」

丸半日も心理チェックから、各種非破壊検査機で調べたというのに、こいつはまだ鮫川が敵の仲間だと疑っていた。


「有機ニューロンが全部抜けてるんだ。れっきとした人間だよ」加山が言った。


「それに俺達の人数では近いうちに惨殺されるのは目に見えている」大貫が言った。


「とんでもない遠回りをさせられるかもしれないけど、慌てちゃダメよ」大貫の横に立っていた星野が言った。

「こっちのエス《スパイ》もいる。お前には分からないが、問題が起きたら助けてくれるはずだ」


「判った。出来たら武器も貰ってくる」

「落ち着いてな。何があっても落ち着くんだぞ」大貫が言った。



大貫が放り投げたキーグリップを握り、鮫川はポンコツプリウスの運転席に着いた。

錆だらけのプリウスはゆっくりと動き出した。

ハンドルが滑らかに回る。


『俺は少々パニクって馬鹿なことを申し出たのかもしれない』鮫川は思った。第一、奴らがスカロイドで、俺を騙しているのかもしれない』そうは思いながらも、鮫川は自分の行動に後悔はしていなかった。



                           to be continued


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