第4話 ピアスの数は不満の数

2人無言で食事をしている。

手が食物を運び、咀嚼する。

そしてまた、それの繰り返し。

人類の最初の単純作業。

ドラールを見つめる。

僕は生来研究者気質だ。

歪で小さなこの少女に興味が湧いてしまった。

こんこんと湧き続けるそれを、もう自力で止めることはできない。

そっと、そっと観察をする。

長い睫毛はクロワッサンへと向けられている。

舐めるように。

蛇が鼠を見る様に。

観察。

ふと耳で視線の移動が止まる。

違和感。

ピアスの穴?

しかも一つではない。

軟骨にも。

全てにピアスをつけたら耳が覆われてしまうのではないかと言うほど、空いている。

何故。

華奢な身体からは想像がつかない、ピアス穴の量。

先のタトゥーと言い、何処かおかしい。

歪、不自然、

そんな言葉が浮いては消える。

合理的なこじ付けも思い浮かばない。

浮かんでも無理がありすぎ、意味がわからなすぎ。

ふと薄橙の大きな瞳が僕を捉える。

「さっきからどうしたの、翔平?何かついてる?」

見惚れてたんだよ、と茶化す。

満更でもないのか身体をくねらせた。

「そうだ、翔平。お洋服仕立ててもらいに行こっか」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る