酒は憂いの玉箒

大河

第1話「上代先輩と謎のおっさんと酒」

 上代先輩は日本酒になった。


 つい二日前、九月の第二土曜。近所の酒造であった蔵開き。お猪口を片手に、飲み放題の酒を片っ端から味わう先輩の姿を思い返す。


「なんかこう、髭面のおっさんが降臨したんだよね。寝室。天井を貫通してきたから多分人間じゃないと思うんだけど。で、お前日本酒飲みすぎてるから、日本酒になってもらうことにしたわ、的なこと言うわけよ。おっさんが」


 現人神、ならぬ現人酒。

 この世に人の姿で現れた酒。

 人間でありながら、同時に酒でもある存在。


「……今日はさすがに酔ってないからね?」


 嘘つけ。

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