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 バッキーの様に結論から言おう。1回目は失敗した。リンゴはたわわに実ったが、野鳥が蜂ロボを食べて死んでしまった。これは考えていなかった。改良型mark2で自然蜂のような黄色黒の警戒色を付けて、誤飲事故は無くなった。

 はじめ、蜂ロボのシステムには「巣となる充電器」「目標とする花」だけをインプットしていた。それ以外は「避ける障害物」で、音を拾う機械は積んでいない。カメラの情報だけで判断する。決められた範囲内をランダムに行く、空飛ぶルンバだと思ったらいい。mark3は、花柄のシャツを着た俺に蜂ロボが群がるという貴重なバグデータを得たので、「花」の改良と新しく「人」をインプットしたものだ。

 さて、今やスーツ姿で各地を飛び回る俺のセールトークはこんな感じ。

 「この小さなロボットは、プライバシーと大切な花粉を守る為に人から遠ざかるシステムを持っています。ご要望の生きた花を判別し、自家受粉を促します。充電式で、専用の巣箱……充電器ですね、これへ自動で戻ります。自然な蜂のような針や、触角などの細かなパーツはありません。カメラは魚眼レンズで映像データは歪んだまま扱われますので、ごく簡単に言いますと悪用しようがない、という事です。初めてのご契約ですので、15パーセント増数してレンタルしますが、いかがでしょうか?」

 果樹園のオーナーはだいたい老人だったので、暑さで倒れるよりいいか、と蜂ロボを借りた。

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