ビー玉にゃーん

 僕は空地でビー玉を一つ拾った。それは透き通っていて、綺麗なビー玉だった……ということはなく、泥まみれで結構汚れていた。

 そんな汚いビー玉だが、泥で汚れていない中身のほうはきっと綺麗だろう。ふとそう思った僕は、そのビー玉を思いっきりアスファルトの地面に叩きつけてみた。

 ビー玉は粉々に砕け、あたりにガラスの破片が飛び散った。それと同時に、玉が割れた地点からもくもくと煙が立ち上った。それを見て、一瞬僕はあのビー玉が実は超小型の爆弾だったのでは、と焦ったが、出てくるのは煙だけで、爆発したり発火したりする様子はなかったので、安心した。しかし、ほっとするのも束の間、煙の中から黒い人影が現れた。

 煙が薄れ、その影の正体があらわになる。それは筋骨隆々の男の姿で、肌は浅黒く、白いダボダボの白いズボンを穿いていて、上半身は裸だった。口の周りには黒々とした髭がびっしり生えそろっており、頭は禿げていた。男は腕を組んで立っており、眼光は鋭い。

 筋肉隆々の男は僕を見据え、おもむろに口を開き、

「にゃーん」

 と裏声で喋ったかと思うと、煙とともにスッと消えて行った。

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